資源ゴミ置き場
あまり健全ではない文章を置いていく場所だと思います。
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グレーテルの人体練成にっき2
(まえがきのような何か)
この文章は、こちらの続きになっています。引き続きグレーテルの日記のような何か。
今回はレントンさんを人体練成するまでのパートになっています。
×月×日
今日は天気が良かったので緑色のお兄ちゃんを連れて外に行ってみました。
プチと遊ぶ緑のお兄ちゃんはとても楽しそうです。
だけど、遊び終わったあとに服を汚してしまったのでお風呂に入れなければいけませんでした。
外に連れていってあげたら、緑のお兄ちゃんはあまりいたずらをしなくなったような気がします。
前はわたしの髪の毛を引っ張って遊んだり、スカートをめくったりするので大変でした。
緑のお兄ちゃんのいたずら好きは最近の頭痛の種になっていたので、家でいたずらをされるよりは外へ連れていってあげた方がずっといいのだと思います。
あと、緑のお兄ちゃんは、寝る時には"お人形"に戻ってもらうことにしました。
お兄ちゃんの姿のままだと、ベッドに入りません。
……そういえば、エレアの緑色だったお兄ちゃんと青いお姉ちゃんがいた洞窟には確か"オミン"と書かれたぼろぼろの布切れが落ちていました。
確か、その布切れは子供が着る服の胸に付いているような名札の布にとても似ていたと思います。
エレアのお兄ちゃんもお姉ちゃんも"オミン"という名前じゃありませんでした。
あとは、そうだ。エレアのお兄ちゃんはわたしが今回のお人形作りに使ったお肉を"乞食の肉"だと言っていた覚えが、あります。
エレアのお兄ちゃんがもってきた乞食のお肉は人だった頃には"オミン"という名前を持っていたのでしょうか。
もしかすると、"オミン"という名前だったお兄ちゃんはまだ子供だったのかもしれません。
貧しい子供が乞食になって死んでいく……とてもよくある話でしょう。
この世界はたくさんの子供が生まれては死んでいきます。赤ちゃんを産めない死体になってしまったわたしからすると、それはとてもひどく悲しいことです。
もしかすると、こんな世界で苦しみながら生きて死んでいくよりは、母のお腹の中で守られて生まれてこないことの方がしあわせなのかもしれません。
もう、今のわたしにはお腹の中で子供を守ってあげるための臓器がないのだけれど。
わたしは、お人形を抱いているととても安心します。特に、お腹の中で温めてあげるふりをするととても気持ちが安らぐのです。
きっと、わたしは何かを諦めきれないのでしょう。だからこそ、わたしはお人形が大好きなのです。
……いたずらばかりする緑のお兄ちゃんのことはこれからは"オミン"と呼ぶことにします。
いたずら好きなのも、子供だったのだと考えたら納得できる話です……。
×月×日
今日も、パーティー会場で紫のお兄ちゃんを見かけました。歌屋さんの演奏が目的なのでしょうか。
街にいると、紫のお兄ちゃんが傍にいる歌屋さんの演奏に文句を言ったり石を投げるのをよく見かけます。
紫のお兄ちゃんは音楽が好きなのでしょうか。そうだとすれば何だか意外に思います。
私は紫のお兄ちゃんが歌屋さんをいじめるのを、ただ単にうるさいからだと思っていました。
だって、あのお兄ちゃんはいつも"人の声や人の立てる音なんて聞きたくない"とでもいう顔をしていたもの。人は見かけで判断してはいけないものです。
あのお兄ちゃんはどんなウタが好きなのでしょうか。少し考えてみます。
……何にしても、パーティー会場にいるお兄ちゃんからはお人形の材料を貰いたいのだけれど。
そういえば、前にお買い物がしたくて魔術士ギルドに寄った時は入口で紫のお兄ちゃんがぼんやりと立っていて邪魔だったので声をかけようとしたら間違えて"お兄ちゃん"と呼んでしまいました。
いきなり他人を"お兄ちゃん"や"お姉ちゃん"と呼ぶのは変だと分かっているのだけれど、わたしはどうしてなのかこの言い間違いが直りません。
他人を"お兄ちゃん"や"お姉ちゃん"と呼んでいいのは"妹"くらいのはずなのに変なノ。
紫のお兄ちゃんはわたしに"お兄ちゃん"と呼ばれると、怯えるような怒っているような声で"その呼び方はやめてくれ"と言っていました……。
他の人なら"お兄ちゃん"と呼んでも少し変な目で見られるだけで済むだけだけど、紫のお兄ちゃんは"お兄ちゃん"と呼んだら少し泣きそうな目をしていました。呼び間違えないように気をつけなくちゃ。
そうだ。"妹"といえば、生きものだった頃、わたしには血の繋がったお兄ちゃんがいたとグランマから聞いたことがありました。
でも、わたしにはお兄ちゃんの記憶がありません。お兄ちゃんはまだ小さいうちに病気で死んでしまったと聞きました。
わたしがグランマと暮らすようになったのは、この"お兄ちゃん"のことが関係したみたいです。
グランマはとても優しい人でした。でも、わたしにはお母さんとお父さんに優しくされた記憶がありません。
お母さんは私が生まれた後に病気で死んでしまったようでした。お父さんは……わたしを嫌っていたみたいです。
お父さんはわたしを"魔女の子供だ"と言っていました。あの頃は、大好きだった絵本に出てくる魔女のことを言っているのだと思って嬉しかったのだけど、きっと悪い魔女だと言いたかったのだと思います。
"良い魔女"と"悪い魔女"というのは一体誰が決めるのでしょうか。わかりません。
ああ、話が逸れちゃった。まだ集まっていない紫のお兄ちゃんのお人形の材料は、体液だけになりました。
緑のお兄ちゃ……オミンの時は血液だけを使ったのですが、他の体液を混ぜるとどうなるのでしょう。例えば涙とか唾液とか。
どんな体液を混ぜようかな。とにかく、試してみたいと思います。
唾液をちょうだいなんて言ったら……流石にヘンタイ扱いされてしまいそうです……。
ましてや、精液なんて……やっぱりダメです。
×月※日
昨日は、緑のお兄……じゃないや、オミンが吸血コウモリに噛まれてしまいました。
空き地のモンスター退治の依頼で、目を離した隙に倒れてしまっていたのです。
オミンのお人形は首が破れてしまったので、わたしは悲しくなりました。
ルミエストの南にある酒場にいるバーテンダーのお姉ちゃんにオミンを預けて暫くすると、オミンの身体は修理されて戻ってきました。
でも、戻ってきたオミンはとても不機嫌そうだったのでこれからはちゃんと目を離さないようにしなくてはいけません。
酒場は歌屋さんが歌っていて酔っ払った人たちがとてもうるさい場所です。
特に、煙草を吸う人が苦手です。あの煙を吸っていると目と頭が痛くて仕方なくなるから。
どうしてあんな煙をわざわざ吸いたがるのか、わたしにはわかりません。
昔、遠い国には自分の腕を煙草の火で焼く女の子や男の子がいると本で読んだことがありました。
あの時、わたしは本の挿絵に書かれた女の子や男の子の火傷だらけになった腕を怖いと思っていた覚えがあります。だけど、目を離すことができなかったのです。どうしてかしら。
あと、お父さんやお母さんに嫌われた小さな子供が煙草の火を押し当てられて泣いている絵のある本を読んだことがあったのです。これも怖くて嫌いな絵本でした。
こんな本、一体どこで読んだものだったのかしら。今となっては思い出せません。
本に書かれていた言葉も、まったく何も思い出せないのです。
そうそう。こんなことが書きたいんじゃないのです。煙草の話はここで終わります。
昨夜の酒場には、テーブルに突っ伏してしくしくと泣いている男の人がいました。
他の人たちはその人を迷惑そうな目で見ています。みんなが"この人を店から追い出してくれ"という顔をしているのですが、誰もその人に近寄ろうとしません。
わたしはわたしで、泣いているその人を間違えて"お兄ちゃん"と呼んでしまったのでそこからが大変でした。
泣いているのは紫のお兄ちゃんだったのです。しかも、かなりひどく酔っ払っていました。
お兄ちゃんは余計に泣いてしまうし、泣きながら絡んでくるし、正直に書けば怖かったです。
それにしても、酔っ払った人はどうしてみんな"飲んでいないよ"と言うのでしょうか。不思議です。
とりあえず。その時に紫のお兄ちゃんからは少しだけ涙を貰ってきました。手荷物に空き瓶があったので助かりました。
思えば、昨夜に血も貰ってこれば良かったのです……それどころじゃなかったのだけど。
お兄ちゃんの動かないお人形が、どんどん重くなっていきます。
○月×日
今日は、やっと紫のお兄ちゃんから血を貰うことに成功しました。
これでやっとお人形を作ることができます。
たくさん余ったお肉はもう食べちゃっています。お兄ちゃんのお肉ってどうしてこんなに美味しいのでしょうか。
二人目のお兄ちゃん作りは、今夜始めることにします。お兄ちゃんを入れる鍋はきれいに洗っておかなくちゃ。
そういえば、気が付くと家にある服が全部黒くなっていました。
ものを書く時にいつもインクをこぼして、そのたびに落ちなくなったインクをごまかすため黒く染めているせいです。
でも、明るい色より黒やぶどう色みたいな暗い色のほうが落ち着くのでこれでいいかなと思いました。
街の人と話をしていると、どうやらわたしは「紫をまとう骨」と呼ばれているみたいです。
紫はまだわかります。これは髪の色でしょう。でも、骨というのは……やっぱり、骨だけになってしまった左手を見せるのがいけないのでしょうか。
前は、街の人に"そんな骨が剥き出しの腕で痛くないのか"と聞かれたことがあったと思います。ヨウィンでは、見知らぬ子供に腕を見られて泣かれたこともあったのでした。
わたしは今まで気にしていなかったけれど、骨が剥き出しの腕なんて生きている人たちからすると不気味なのかもしれません。
そういえば、この骨だけの左手には爪もないので少しものを持つのにも不便です。
そうだ。指先に爪を付けた手袋があれば少し便利になるかナ。手袋だと腕を隠すこともできます。
でも、そこら辺のお店では爪のついた手袋なんて売っていません。
どうすればいいのか。ちょっと考えてみることにします。
……さっきから猫のコフゲンがにゃんにゃん鳴いています。お腹が空いているみたいだからご飯をあげなくてはいけません。
まだノースティリスに着いたばかりの頃のコフゲンは、わたしには食べられないものばかりを食べさせてしまっていたのでとても毛並みが悪かったです。
最近は、パンや魚も食べさせてやれるようになったので少しきれいな毛になってきました。
コフゲンは家に置いたままにしているととても退屈そうなので、たくさんの人に可愛がられるところに連れて行ってあげた方がいいのかな……と思います。
あんまり懐いてくれないけれど、洞窟にひとりで寂しかった頃の話相手だったのでコフゲンはわたしにとってとても大切な猫です。
追記。コフゲンにご飯を上げていたら夜になっていたので、今からお人形作りを始めます。
*つづきをよむ*
この文章は、こちらの続きになっています。引き続きグレーテルの日記のような何か。
今回はレントンさんを人体練成するまでのパートになっています。
×月×日
今日は天気が良かったので緑色のお兄ちゃんを連れて外に行ってみました。
プチと遊ぶ緑のお兄ちゃんはとても楽しそうです。
だけど、遊び終わったあとに服を汚してしまったのでお風呂に入れなければいけませんでした。
外に連れていってあげたら、緑のお兄ちゃんはあまりいたずらをしなくなったような気がします。
前はわたしの髪の毛を引っ張って遊んだり、スカートをめくったりするので大変でした。
緑のお兄ちゃんのいたずら好きは最近の頭痛の種になっていたので、家でいたずらをされるよりは外へ連れていってあげた方がずっといいのだと思います。
あと、緑のお兄ちゃんは、寝る時には"お人形"に戻ってもらうことにしました。
お兄ちゃんの姿のままだと、ベッドに入りません。
……そういえば、エレアの緑色だったお兄ちゃんと青いお姉ちゃんがいた洞窟には確か"オミン"と書かれたぼろぼろの布切れが落ちていました。
確か、その布切れは子供が着る服の胸に付いているような名札の布にとても似ていたと思います。
エレアのお兄ちゃんもお姉ちゃんも"オミン"という名前じゃありませんでした。
あとは、そうだ。エレアのお兄ちゃんはわたしが今回のお人形作りに使ったお肉を"乞食の肉"だと言っていた覚えが、あります。
エレアのお兄ちゃんがもってきた乞食のお肉は人だった頃には"オミン"という名前を持っていたのでしょうか。
もしかすると、"オミン"という名前だったお兄ちゃんはまだ子供だったのかもしれません。
貧しい子供が乞食になって死んでいく……とてもよくある話でしょう。
この世界はたくさんの子供が生まれては死んでいきます。赤ちゃんを産めない死体になってしまったわたしからすると、それはとてもひどく悲しいことです。
もしかすると、こんな世界で苦しみながら生きて死んでいくよりは、母のお腹の中で守られて生まれてこないことの方がしあわせなのかもしれません。
もう、今のわたしにはお腹の中で子供を守ってあげるための臓器がないのだけれど。
わたしは、お人形を抱いているととても安心します。特に、お腹の中で温めてあげるふりをするととても気持ちが安らぐのです。
きっと、わたしは何かを諦めきれないのでしょう。だからこそ、わたしはお人形が大好きなのです。
……いたずらばかりする緑のお兄ちゃんのことはこれからは"オミン"と呼ぶことにします。
いたずら好きなのも、子供だったのだと考えたら納得できる話です……。
×月×日
今日も、パーティー会場で紫のお兄ちゃんを見かけました。歌屋さんの演奏が目的なのでしょうか。
街にいると、紫のお兄ちゃんが傍にいる歌屋さんの演奏に文句を言ったり石を投げるのをよく見かけます。
紫のお兄ちゃんは音楽が好きなのでしょうか。そうだとすれば何だか意外に思います。
私は紫のお兄ちゃんが歌屋さんをいじめるのを、ただ単にうるさいからだと思っていました。
だって、あのお兄ちゃんはいつも"人の声や人の立てる音なんて聞きたくない"とでもいう顔をしていたもの。人は見かけで判断してはいけないものです。
あのお兄ちゃんはどんなウタが好きなのでしょうか。少し考えてみます。
……何にしても、パーティー会場にいるお兄ちゃんからはお人形の材料を貰いたいのだけれど。
そういえば、前にお買い物がしたくて魔術士ギルドに寄った時は入口で紫のお兄ちゃんがぼんやりと立っていて邪魔だったので声をかけようとしたら間違えて"お兄ちゃん"と呼んでしまいました。
いきなり他人を"お兄ちゃん"や"お姉ちゃん"と呼ぶのは変だと分かっているのだけれど、わたしはどうしてなのかこの言い間違いが直りません。
他人を"お兄ちゃん"や"お姉ちゃん"と呼んでいいのは"妹"くらいのはずなのに変なノ。
紫のお兄ちゃんはわたしに"お兄ちゃん"と呼ばれると、怯えるような怒っているような声で"その呼び方はやめてくれ"と言っていました……。
他の人なら"お兄ちゃん"と呼んでも少し変な目で見られるだけで済むだけだけど、紫のお兄ちゃんは"お兄ちゃん"と呼んだら少し泣きそうな目をしていました。呼び間違えないように気をつけなくちゃ。
そうだ。"妹"といえば、生きものだった頃、わたしには血の繋がったお兄ちゃんがいたとグランマから聞いたことがありました。
でも、わたしにはお兄ちゃんの記憶がありません。お兄ちゃんはまだ小さいうちに病気で死んでしまったと聞きました。
わたしがグランマと暮らすようになったのは、この"お兄ちゃん"のことが関係したみたいです。
グランマはとても優しい人でした。でも、わたしにはお母さんとお父さんに優しくされた記憶がありません。
お母さんは私が生まれた後に病気で死んでしまったようでした。お父さんは……わたしを嫌っていたみたいです。
お父さんはわたしを"魔女の子供だ"と言っていました。あの頃は、大好きだった絵本に出てくる魔女のことを言っているのだと思って嬉しかったのだけど、きっと悪い魔女だと言いたかったのだと思います。
"良い魔女"と"悪い魔女"というのは一体誰が決めるのでしょうか。わかりません。
ああ、話が逸れちゃった。まだ集まっていない紫のお兄ちゃんのお人形の材料は、体液だけになりました。
緑のお兄ちゃ……オミンの時は血液だけを使ったのですが、他の体液を混ぜるとどうなるのでしょう。例えば涙とか唾液とか。
どんな体液を混ぜようかな。とにかく、試してみたいと思います。
唾液をちょうだいなんて言ったら……流石にヘンタイ扱いされてしまいそうです……。
ましてや、精液なんて……やっぱりダメです。
×月※日
昨日は、緑のお兄……じゃないや、オミンが吸血コウモリに噛まれてしまいました。
空き地のモンスター退治の依頼で、目を離した隙に倒れてしまっていたのです。
オミンのお人形は首が破れてしまったので、わたしは悲しくなりました。
ルミエストの南にある酒場にいるバーテンダーのお姉ちゃんにオミンを預けて暫くすると、オミンの身体は修理されて戻ってきました。
でも、戻ってきたオミンはとても不機嫌そうだったのでこれからはちゃんと目を離さないようにしなくてはいけません。
酒場は歌屋さんが歌っていて酔っ払った人たちがとてもうるさい場所です。
特に、煙草を吸う人が苦手です。あの煙を吸っていると目と頭が痛くて仕方なくなるから。
どうしてあんな煙をわざわざ吸いたがるのか、わたしにはわかりません。
昔、遠い国には自分の腕を煙草の火で焼く女の子や男の子がいると本で読んだことがありました。
あの時、わたしは本の挿絵に書かれた女の子や男の子の火傷だらけになった腕を怖いと思っていた覚えがあります。だけど、目を離すことができなかったのです。どうしてかしら。
あと、お父さんやお母さんに嫌われた小さな子供が煙草の火を押し当てられて泣いている絵のある本を読んだことがあったのです。これも怖くて嫌いな絵本でした。
こんな本、一体どこで読んだものだったのかしら。今となっては思い出せません。
本に書かれていた言葉も、まったく何も思い出せないのです。
そうそう。こんなことが書きたいんじゃないのです。煙草の話はここで終わります。
昨夜の酒場には、テーブルに突っ伏してしくしくと泣いている男の人がいました。
他の人たちはその人を迷惑そうな目で見ています。みんなが"この人を店から追い出してくれ"という顔をしているのですが、誰もその人に近寄ろうとしません。
わたしはわたしで、泣いているその人を間違えて"お兄ちゃん"と呼んでしまったのでそこからが大変でした。
泣いているのは紫のお兄ちゃんだったのです。しかも、かなりひどく酔っ払っていました。
お兄ちゃんは余計に泣いてしまうし、泣きながら絡んでくるし、正直に書けば怖かったです。
それにしても、酔っ払った人はどうしてみんな"飲んでいないよ"と言うのでしょうか。不思議です。
とりあえず。その時に紫のお兄ちゃんからは少しだけ涙を貰ってきました。手荷物に空き瓶があったので助かりました。
思えば、昨夜に血も貰ってこれば良かったのです……それどころじゃなかったのだけど。
お兄ちゃんの動かないお人形が、どんどん重くなっていきます。
○月×日
今日は、やっと紫のお兄ちゃんから血を貰うことに成功しました。
これでやっとお人形を作ることができます。
たくさん余ったお肉はもう食べちゃっています。お兄ちゃんのお肉ってどうしてこんなに美味しいのでしょうか。
二人目のお兄ちゃん作りは、今夜始めることにします。お兄ちゃんを入れる鍋はきれいに洗っておかなくちゃ。
そういえば、気が付くと家にある服が全部黒くなっていました。
ものを書く時にいつもインクをこぼして、そのたびに落ちなくなったインクをごまかすため黒く染めているせいです。
でも、明るい色より黒やぶどう色みたいな暗い色のほうが落ち着くのでこれでいいかなと思いました。
街の人と話をしていると、どうやらわたしは「紫をまとう骨」と呼ばれているみたいです。
紫はまだわかります。これは髪の色でしょう。でも、骨というのは……やっぱり、骨だけになってしまった左手を見せるのがいけないのでしょうか。
前は、街の人に"そんな骨が剥き出しの腕で痛くないのか"と聞かれたことがあったと思います。ヨウィンでは、見知らぬ子供に腕を見られて泣かれたこともあったのでした。
わたしは今まで気にしていなかったけれど、骨が剥き出しの腕なんて生きている人たちからすると不気味なのかもしれません。
そういえば、この骨だけの左手には爪もないので少しものを持つのにも不便です。
そうだ。指先に爪を付けた手袋があれば少し便利になるかナ。手袋だと腕を隠すこともできます。
でも、そこら辺のお店では爪のついた手袋なんて売っていません。
どうすればいいのか。ちょっと考えてみることにします。
……さっきから猫のコフゲンがにゃんにゃん鳴いています。お腹が空いているみたいだからご飯をあげなくてはいけません。
まだノースティリスに着いたばかりの頃のコフゲンは、わたしには食べられないものばかりを食べさせてしまっていたのでとても毛並みが悪かったです。
最近は、パンや魚も食べさせてやれるようになったので少しきれいな毛になってきました。
コフゲンは家に置いたままにしているととても退屈そうなので、たくさんの人に可愛がられるところに連れて行ってあげた方がいいのかな……と思います。
あんまり懐いてくれないけれど、洞窟にひとりで寂しかった頃の話相手だったのでコフゲンはわたしにとってとても大切な猫です。
追記。コフゲンにご飯を上げていたら夜になっていたので、今からお人形作りを始めます。
*つづきをよむ*
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