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資源ゴミ置き場

あまり健全ではない文章を置いていく場所だと思います。

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古びた日記の切れ端

 
 (まえがきのようなもの)
 この文章はElona自PC(グレーテル)の過去っぽいものでした。おおよそリッチ化する前。
 あまり見ていて気持ちいい内容のものじゃないと思います。
 あと、あまりElona要素を盛り込めませんでした。
 

 
 ○月△日
 あの人は、三日前に音楽の演奏会だと言って家を出て行きました。
 今日も、帰ってきません。
 でも、こんなことは前にもあったのです。何度も。
 前も、一ヶ月くらい帰ってこなかったから。きっとそれくらいに帰ってくるんだと思って、待とうと思います。
 そういえば、トゥルーデがぬいぐるみの新しいお洋服を欲しがっていました。新しいのを作ってあげよう。
 それから新しいぬいぐるみができました。これで、あの子も寂しくありません。寂しく…ないはずです。
 ……長い間家を開けるのなら、せめて手紙の一通でもよこしてくれたらいいのに。
 本当は、あの人が帰ってこない理由を知っているけれど。トゥルーデがもしこの日記を読んだらと思ったら書けないのです。
 あの子には、こんなこと知ってほしくないから。
 
 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 
 ×月○日
 今日もあの人は帰ってこない。一ヶ月たっても帰ってこないのです。
 前に帰ってきた時は、わたしの目さえ見てくれませんでした。その前も、そうでした。
 ……この文章を書いていたらお腹が音を立てました。
 そうだ。今日は何も食べていません。お腹は空くのに、食べても美味しいと思えないのです。それから……食べたらいつも暫くすると吐き気がして吐いてしまうから。
 前はまだトゥルーデと一緒に食事をするのが楽しかったのに、最近は食べるのがとてもつらくてつらくて仕方ありません。
 食べても吐いてしまうのに、食べる意味なんてあるのかしら……?
 でも、食べないと身体は弱っていく一方です。栄養が足りないからなのか、爪もぼろぼろになってしまいました。
 そして、鏡を見たら前より病みやつれた姿の女が映っているのです。これが、わたし……?
 食べては吐くたび、人前に出るのが嫌になって身体も段々弱っていっているような気がします。
 醜い姿なのだから、人前に出るのが嫌になるのは当たり前です。吐いたら栄養が足りないので身体が弱るのも当たり前です。
 きっと、あの人が帰ってこないのも私が醜いからなのです。
 前はトゥルーデが見ちゃいけないと、この日記に書く言葉を選んでいたけれど、最近のわたしはもうそんなことを考えていられないのです。
 書きでもしないと、不安で気が狂いそうで、気が狂いそうで、気が狂いそうでしかたないのです。
 ……そろそろ、夕飯の準備をしなくちゃいけません。
 トゥルーデの分と、あの人の分と、それからわたし。わたしのぶん。
 あの人は帰ってこないのに、わたしは食べても吐いてしまうのに、わたしはどうして料理をしているの……?ねえ。
 でも、トゥルーデは食べてくれるから。料理は作らなくちゃいけません。せめて、一人分だけでも。作らなくちゃ。
 
 ×月△日
 今日は久しぶりにあの人が帰ってきました。
 でも、わたしは朝から頭が痛くてベッドから出ることができませんでした。
 あの人は……わたしの顔もほとんど見てくれません。
 昨日は料理をしていたらぼんやりしていたせいで、左手を深く切ってしまいました。
 脈を打っている血管まで切ってしまったから血が止まらなくて、血が止まらなくて。食べ物を見るのもつらいのに料理をして手を深く切って、痛くて痛くて……。
 トゥルーデには怪我をした手なんて見せられません。昨日は、食事をする前から吐いてしまったので柔らかいスープしか食べられませんでした。
 それから、今日は朝から頭が痛くて眩暈がして。それなのに、あの人はわたしにやさしい言葉もかけてくれません。
 一瞬だけ、あの人のことを「ひどい」と思ってしまいました。きっと、笑顔を作れないわたしが悪いのに。ベッドから出られず寝てばかりのわたしが悪いのに。
 こんなのじゃ、トゥルーデの面倒も満足に見られません。
 夜になってから起きて、こんな気持ちを忘れたくてまた眠るため眠り薬をつまみにビアなんて飲みながらこの日記を書いているわたしはとても馬鹿です。
 
 ×月×日
 目を覚ましたら、部屋があちこち散らかっていました。
 それも、色々なものが壊れているのです。カーテンやベッドの枕はザキザキに切り刻まれて。花瓶やコップは割れて。壁には穴が開いています。
 それから。床が血まみれになっていました。左手はちゃんと止血したはずなのにと思ったら、左腕に覚えのない傷が増えているのです。
 血だまりの中には、ぬいぐるみや人形の服を作るのに使っていた、布を切るハサミが落ちています。
 新しい傷はうさぎの耳みたいな形です。それも、ハサミで強く抉ったみたいな……。
 それから、それだけじゃない。血だまりには髪の毛の束が落ちています。 ゆるやかに波打った黒くて長い髪が。たくさん。
 これは、あの人の髪です。間違いない。
 でも、何も思い出せないのです。昨日、わたしは薬とお酒を飲みながら日記を書いていて……それからの記憶がないのです。
 あの人の姿は、どこにもありません。トゥルーデは子供部屋で眠っています。この子は、きっと何も知らないはず。
 わたしは、一体何をしてしまったのでしょうか……?
 
 ×月×日
 今日は、あの人からの手紙が届きました。
 手紙には、ただ「別れよう」とだけ、書かれていました。
 それから、夫婦の関係を解消する手続きのために必要な紙が入っていました。紙にはあの人のサインが書いてあります。
 つまり、あとはわたしがサインを書くだけだというのです。
 あの人は、わたしから逃げるつもりなのです。わたしの顔を見ることもなく。わたしとの娘を置いて。
 でも、あの日、記憶がなくなった日にわたしがしてしまったことが原因に違いありません。
 あの人は、もうわたしと暮らしていけない。
 全部、もう二度と戻らないのです。
 何もかも。戻らないのです。
 
 *日記はここで途切れている*
 

 
 (おまけ)
 グレーテルは生前のうちに離婚済みという設定。主に精神的にアレだったので逃げられた。
 トゥルーデ=幼少期のゲルトルート
 
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