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資源ゴミ置き場

あまり健全ではない文章を置いていく場所だと思います。

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嘔吐。(R-18G)

 (警告のようなもの)
 この文章は昨年の11月頃に描いたUBOK.のEric.と夢を。の永付きのお話でした。
 タイトル通り元ネタはcali≠gariというバンドの「嘔吐」という曲でした。
 サルトルの方じゃないです。

 例によってグロテスクな表現と性的な表現を含むので閲覧は注意してください。 
 カニバリズムとか嘔吐とか屍姦とかかなりひどい表現を含みます。本当に。

 
 



 

 
 
 目の前で鍋がぐつぐつと音を立て、その蓋の隙間から白い湯気と美味しそうな匂いが漏れている。
 その鍋の中身は何の変哲もない肉入りスープである。
 肉が茹で上がったのを確認すると、僕は居間のテーブルにその鍋を運んだ。
 窓から太陽の光がさんさんと漏れてくる。暖かな太陽の光がとても気持ちいい。
 窓を開けると太陽の光と同じく気持ちいい風がそよそよと吹いてくる。今日も穏やかな午後だ。
 僕は一人分の肉入りスープを皿に盛り付け、口に運んだ。まあまあの味だ。
 スープを食べ終わり、食器を洗うと居間のソファに腰を下ろす。今日は本当にいい天気だ。
 そのまま、僕は静かに目を閉じた。
 
 
 気が付くと、僕はソファの前に立っていた。
 自分の両手を見ると傷だらけだ。まるで爪で引っ掻かれたようだ。指ががくがくと震えている。
 そして、目の前のソファには「彼」が横たわっていた。その顔は黒い前髪に隠れてよく見えない。
 だが、彼が既に死んでいることはすぐに分かった。
 その首には強く絞められたようなアザが、両手の爪には赤い血がこびりついていた。
 「彼」が身につけた青いTシャツのプリントである大きな目だけが無機質に僕をじっと見つめている。
 未だ震え続ける自分の両手にもう一度目をやる。いつも着けていたリストバンドは外れていた。
 骨のように細い手首も傷だらけになっている。
 両手が震えるのは「彼」の首を絞めるのに力を込めたからだ。
 両手が引っかき傷だらけになっているのは、首を絞められながら抵抗する「彼」に何度も引っ掻かれたからだ。
 その時になって初めて、両手の傷が痛み出した。
 だが、人を一人この手で殺めたというのに僕はやけに冷静だった。人を一人殺めるというのはこういうことなのだろうか。
 暫く呆然としたところで、僕は「彼」をソファから抱き起こしていた。まだ体温が残っている。
 だが、力を失くしたその身体はとても重く感じた。
 その時になって、僕は「彼」の下半身が生温かい何かで濡れていることに気付いた。そして、それはソファにも及んでいた。
 ふと、「彼」が首を絞められる前に「トイレに行きたい」と言っていたことを思い出す。
 どうやら「彼」は死に際に失禁していたらしい。死の前にトイレに立っていてもなお人は失禁するものなのか。
 僕はソファを汚されてしまったことを少し腹立たしく思った。だが、死人相手に怒ることなどできるわけがない。そんな諦めの気持ちが程なくしてそのかすかな怒りを消し去っていった。
 そして、僕はその身体を何とか担ぎ上げ、浴室へと向かった。
 浴室の床に死体を横たえると僕はまずそのズボンを下ろし始めた。そして、下着を脱がしていく。
 そのまま顕となった死体の下半身をぬるいシャワーの水で洗っていく。
 せめて衣服と身体は洗ってやろう。そう思っての行為だったのだが、この時の僕はその行為に何とも言えない興奮を覚えていた。
 死体を相手に欲情するなんて人として最低だ。しかも相手は僕と同じ男だ。
 もう既に人を殺すという大罪を犯してはいるが、これ以上の罪を重ねてはならないはずだ。
 しかし、それを意識すればするほど理性と反して興奮は抑え難いものへと変わっていった。
 この劣情をもう堪えることはできない。そう感じた僕はおもむろに自分の下着を下ろし、自身を恐る恐る「彼」の中へと挿し入れていたのだ。 
 拒絶の言葉を吐かない「彼」は僕をいともたやすく受け入れた。だが、それと同時に「いいよ」と言うこともなかった。
 僕が腰をいくら突き動かしても「彼」が反応することはない。それでも、死して緩んだままのそこに自身を抜き差しし続けるのを止められない。
 更に、僕は「彼」の腕に思い切り齧り付いた。そして、そのままその肉を食いちぎって咀嚼する。
 噛みちぎった「彼」の肉を飲み下すと、僕はもう一度「彼」の身体に齧り付く。
 それを繰り返すうちに、浴室の床は赤く染まっていった。僕の顔も床と同じように血まみれになっているはずだ。
 増していく快感と比例するかのように息は荒くなっていく。そうして腰を動かし続け、大きな痙攣と共に僕は「彼」の中で絶頂に達したのだった。
 「彼」の中から自身を引き抜くと、僕は身体が鉛のように重くなるような感覚を覚えてその場にへたり込んだ。
 口の中、そして胃の中に「彼」の血の味が充満している。やがて、その血の味は胃を刺激して不愉快な感覚を生み始める。
 ――僕は一体何をしているのだろう。
 後ろでもう一人の「僕」がそう言いながら僕を見ているような気がした。
 僕は「彼」にひどいことをしてしまった。更に僕は食した「彼」の血肉をいずれ排泄するというひどいことをしてしまうだろう。
 激しい罪悪感が僕を襲う。それは耐え難い恐怖を感じるものだった。
 僕は「彼」のことがとても好きだったはずだ。それなのに何故こんなひどいことをしてしまったのだろう。
 「彼」の全てを見透かすような澄んだ目が怖かったからだろうか。
 それとも、昨夜に見た夢がとてもつまらなかったからだろうか。
 それとも、やはり「彼」のことが大好きだったからこそ、こんなことをしてしまったのだろうか。
 暫くそんな事をぼんやり考えていたが答えは出なかった。そして、僕はふらふらとトイレに向かった。
 そこで僕は胃の中身を全て吐きもどした。
 僕は「彼」を吐いた。
 
 
 再び僕が目を開けると、そこは居間だった。そこで今まで見ていたものが夢だという事に気付く。
 どれくらいの間眠っていたのだろうか。壁の時計は午後三時を指しているところだった。
 気が付けば口の中と喉がからからに渇いていた。そのせいで口の中が心なしか血なまぐさいような気がする。
 それが、夢の中で「彼」の死体に齧り付いた時の味を思い出させてひどく不快に思えた。
 夢だと気づいたならばいつものように自分の頬を叩いて目を覚ますことが出来たはずだろう。
 とにかく、相当ひどい内容の夢を見たものだ。僕は疲れているのだろうか。我ながら自分の精神状態がとても心配になる。
 僕は、軽く咳き込みながら台所に向かい、コップに水を汲んで一気に飲み干した。
 だが、それが仇となったのか程なくして激しい不快感が胃の中に充満した。喉が嗚咽し、胃液が喉を逆流しようとしている。
 もう駄目だ。
 僕は咄嗟にトイレへと駆け込んだ。
 そして、結局僕は現実でも嘔吐する羽目になってしまったのだった。
 洗面所でうがいをしていると、不意に玄関の呼び鈴が鳴った。
 玄関の扉を開けると、そこには「彼」が立っていた。
「あれ。どうしたの?」
 僕は尋ねた。背後からはトイレの流水音が聞こえてくる。
「前に君が僕の家に来た時、パーカーを忘れていたから届けに来たよ。洗濯してたから、遅くなってごめんね」
 「彼」はそう言うと、紙袋から取り出した灰色のパーカーを僕に差し出した。それは僕のものだ。
 そういえば数日前に「彼」の家に遊びに行った時、暑い日だったからなのか「彼」の部屋でパーカーを脱いだまま忘れていってしまっていたのだ。わざわざ洗濯までして届けに来てくれたというのだから感謝でいっぱいだ。
「ああ。わざわざありがとう」
 そう返したところで、夢の中でこそあれ「彼」に対して働いた行為への罪悪感がひたひたと押し寄せるのが分かった。
「あれ。どうしたの? 何だか顔色が悪いけれど大丈夫?」
 「彼」の問いに、僕はどう返答しようか迷った。
 どう考えても本人を相手に「君の死体を犯しながら食べる夢を見て気分を悪くした」なんて言えるはずがない。
 「彼」が心配するような顔をしている。だが、今はその目を見る事は出来そうになかった。
「うん。大丈夫。心配しないで」
 苦笑しながらそう答えたが、これでごまかせるはずがないだろう。
 だが、不意に「彼」の方が先に呟いた。
「ごめん……」
 僕はその言葉に不意を突かれた。何故忘れ物のパーカーを届けに来ただけの「彼」が謝る必要があるのだろうか。
 忘れ物を届けに来るのが遅くなったことをそんなに気に病んでいたのだろうか。むしろ、僕の方こそ「彼」に謝らなくてはならない。
 僕はその謝罪の意味が理解できないまま「彼」に向けて言った。
「そんなに気にすることはないよ。僕の方こそ、ごめん」
 おそらく「彼」もまた謝罪の本当の意味を理解することはないだろう。それでも言わずにはいられなかった。
 「彼」が相変わらずの澄んだ目で僕を見ている。その目はさも「何故君が謝らなくちゃいけないの」と言っているようだ。
 「彼」もまた僕の謝罪に別の意味があると読んだのだろうか。
「本当にどうしたの?」
 「彼」が僕に問う。だが、僕は答えることができなかった。
 やっぱり「彼」の澄んだ目は全てを見透かし、全てを語るようで怖い。
 僕は改めてそう思った。

 
 *続かない*
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