資源ゴミ置き場
あまり健全ではない文章を置いていく場所だと思います。
[1] [2]
グレーテルの人体錬成にっき3
(まえがきのような何か)
この文章はこちらの続きになっています。書き手は今回も紫をまとう骨さん。
とりあえず人体錬成パートはここでおしまいです。
この文章はこちらの続きになっています。書き手は今回も紫をまとう骨さん。
とりあえず人体錬成パートはここでおしまいです。
×月○日
昨日の夜は紫のお兄ちゃんからもらったお人形の材料を鍋に入れてお人形を作りました。
お兄ちゃんが入った鍋には、材料と一緒にもらっていた長い髪の毛を混ぜました。
きれいな色なので少しだけ取っておきたかったのですが、お兄ちゃんを髪が伸びるお人形にしちゃえばいいんだと全部入れてしまいました。
……その次の朝、鍋から出てきたのはわたしより背が低い男の子でした。
お兄ちゃんなら、わたしより背が高くなくちゃいけないはずです。
でも、目の前にいる男の子は確かに紫のお兄ちゃんで、わたしは「紫のお兄ちゃんのお人形を作ること」については成功したのです。
子供だったはずのオミン(この子は自分の過去について何も喋ってくれないのだけど)がわたしよりずっと背の高いお兄ちゃんのお人形になって、わたしと同じような歳だった紫のお兄ちゃんが男の子のお人形になって……お人形作りはなかなか思い通りにはいきません。
これは当たり前なのだけど。鍋から出てきたばかりのお兄ちゃんは何も服を着ていなかったので、間に合わせにわたしのブラウスとローブを着せました。お兄ちゃんの服を買いに行かなくちゃ。
お兄ちゃんは今、私のベッドの上で布のお人形に戻って寝ています。
そういえば、男の人のブラウスと女の人のブラウスはボタンが左右で違うと聞いたことがありました。
わたしは死体になってからなのか、ずっと前だったのかもしれないけれど右と左がよく分かりません。
わたしの腕は、骨だけの方が右……じゃなくて左で。呪文を彫った方が右。
前に行った喫茶店ではお店の人に「右と左の見分け方を教えてほしい」と言ってみたら「スプーンを持つ方が右だ」と言われました。
でも、わたしは右でも左でもスプーンが持てるのです。スプーンを持つ時は骨になった方の手が使いやすいけれど、呪文を彫った手の方でも別に困りません。
違う方法を聞きたかったのだけど、お店の人には「意味が分からない」と言われてしまったので喋るのはやめました。
あと、あの喫茶店は煙草を吸う人の煙が流れてきてトマトスープがまずくなったのでもう行くのはやめます。
食事をしながら煙草を吸う人って何を考えているのか。全然わかりません。
わたしは煙草の煙が嫌いなのです。煙草を吸う人もあまり好きじゃありません。
……この文章を書きながら考えごとをしていたら段々頭が痛くなってきました。
どうして死体なのに頭が痛くなるのでしょうか。ナイフで右手に呪文を彫っても痛くないのに頭痛だけはひどいので嫌いです。
薬を飲んでも頭痛が止まらないので、文章を書くのはやめて寝ることにします。
死体にも効く頭痛の薬があれば、欲しいです。
×月×日
今、この文章はルミエストからずっと遠く西にある街の横に建てた倉庫で書いています。
この街、ダルフィはルミエストと比べてとてもくさいです。
酔っ払っいが吐いたもののにおいや、娼婦のお姉ちゃんが付けた香水のにおいや、焼けた爆弾のにおいが混じったような、あまりいいにおいとは言えません。
どうしてなのかしらと思ったら、この街には掃除屋さんがいないのね。
ルミエストって下水道があったり掃除屋さんがいたりするから、嫌なにおいがあまりしないのだと気付きました。
今日は何だかくしゃみが止まりません。きっと、昼にすれ違った娼婦のお姉ちゃんが付けていた香水のにおいが原因です。
すぐ近くでにおいを嗅いだ時は、頭がくらくらして咳き込んでしまいました。
どうして、この街のお姉ちゃんたちは何種類もの香水をたくさん付けるのでしょうか。色々な香りが混ざりすぎていいにおいじゃないのに。わかりません。
……ずっとくしゃみをし続けていたら鼻血が出てきました。
そうするうちに、血が喉に流れてきたので咳き込んだら血を吐いてしまいました。鼻血のせいだと分かっていても、口から血を吐くのは少し嫌です。
寝袋が汚れてしまうので、血が止まるまでまだ眠れません。
それから、いい加減寝袋で寝るのも疲れたので、明日はおうちに帰ろうと思います。
紫のお兄ちゃんは強力なウタの魔法を使うので、お留守番してもらっています。
今のおうちには、メイドのゴルノックさんと援軍の巻物を呼んだら空から降ってきたマッドサイエンティストさんと、あとは突然家に棲みつき始めた"妹"も何人かいるから寂しくないよね?
いつの間にか、わたしのおうちも賑やかになっていました。
おうちにいる"妹"のうち一人は、お兄ちゃんのお人形と似た綺麗な紫色だったのでオミンや妖精さんと一緒に連れてきました。
髪もそうだけど、肌の色も紫色なのです。この子のことはとりあえず"キナ"と呼ぶことにしました。
この子は自分の名前を"キラナ"と言っていたけれど、呼びにくかったので。
それから、わたしの家にいる"妹"のうち一人は、私がお兄ちゃんのお人形を作った後に自分から硫酸を飲んで溶けてしまいました。
妹が溶けてしまったのは拾った絵本を置いている部屋だったので、絵本の表紙が溶けた妹で汚れて大変でした。
あの妹は、そんなにお人形のお兄ちゃんが嫌いだったのでしょうか。
わたしはお兄ちゃんが好きだけど、お兄ちゃんのことが嫌いな妹もいるはずです。
死体になる前のわたしにいたお兄ちゃんが死なずに生きていたら、わたしはお兄ちゃんを好きになっていたでしょうか。
もしかしたらお兄ちゃんを嫌いになっていたかもしれません。
……そうだ。違う。それは違う。わたしはお兄ちゃんのことが好きじゃない。
きっとわたしは"お兄ちゃん"になる前に死んでしまったお兄ちゃんのことが嫌いで仕方なかったのだと思います。でも、お兄ちゃんのことが好きになりたかったのも間違いないのでしょう。
小さい頃、お兄ちゃんとお母さんが死んでしまったから、確かわたしはお父さんに少しでも好かれようと自分の髪をハサミで切ったり男の子の服を着たがったりとお兄ちゃんの真似をしようとしていたのでした。
お父さんはわたしを嫌っていたけれど、お兄ちゃんの真似をしていたらお兄ちゃんの霊が取りついたと不気味がって叩いてきませんでした。
どうやら、お父さんはわたしより死んでしまったお兄ちゃんのことがずっと大好きだったみたいです。
でも、お兄ちゃんの真似をするため女の子が好きなお人形遊びを嫌がってみたり、家にたくさんあった神さまの難しい本を全部覚えてみたりしても、わたしはお兄ちゃんにはなれませんでした。
死んでしまったお兄ちゃんになり代わるように生まれたわたしは、きっと"不吉な魔女の子"でしかなかったのです。
……話が逸れちゃった。こんなこと、今まで忘れていたはずなのにいつの間にかこのノートに書いているのだからとても不気味です。
おうちの話に戻ります。
おうちに帰っても、今の私は"罪人"なのでパルミアやルミエストに入るとガードの人に追いかけられてしまいます。だから、街には入りません。どうせお買い物もできなさそうだし。
罪人になるのはこれで二回目だけど、わたしはそれでもお兄ちゃんのお人形が欲しかったのです。だから、後悔はしません。
生きたお人形はこれ以上いらないので多分もう作らないと思います。
オミンを作ってみてわかったけれど、生きたお人形は生きているのでたくさんの食べ物や血を欲しがります。だから二人いればそれでいいな、と紫のお兄ちゃんを作ったら満足したのです。
でも、食べ物も血も欲しがらない、動かないお人形ならまた作りたくなるかもしれません。作りたくなると思います。
あと、ようやく鼻血が止まったのでやっと眠れます。
×月▽日
今日は久しぶりにおうちにかえってきました。やっぱりしあわせのベッドはとても寝心地がいいです。
鏡を見ると、前髪がまた伸びていたので切りました。今回はただ無造作に切るだけじゃなくて髪の先をハサミで整えるように切ってみました。
右目の方はどうせ見えないのでそんなに前髪を切る必要もないのかなと思うのですが、やっぱり変なので左と同じように切りました。
髪の毛は、やっぱり髪を切るためのハサミで切るのが一番いいです。前は紙を切るためのハサミを使っていたから上手く行かなかったのです。
ダルフィではひたすら依頼をこなして、冒険者の骨を埋めて……をずっと繰り返していたのでとても疲れました。
街に入れるようになったので、久しぶりにパルミアで依頼を受けてみました。
そうしたら、墓を持ってきてほしいなんて言っている人を見かけたのでびっくりしました。
墓を持ってきてほしいという依頼を出してくる人は一体何を考えているのでしょうか。そんなに墓に埋まりたい思いをしたのでしょうか。
墓は、一度埋まると出たくなっても出られないので大変です。それでわたしは両手の爪が剥がれちゃったから。
それから、お腹が空いて何かを食べたくて食べたくて仕方なかったから自分の片腕を食べてしまったのです。片腕のお肉は……腐っていてとてもひどい味でした。
この土地、ノースティリスにはいろいろな食べ物があります。どんな不味いものでも自分の腕よりはましなので呪われてさえなければ食べようと思えば食べられるのです。
墓の中からやっと出られた時に食べた、腐ったトマト(墓石にぶつけられて潰れていた)だってとても美味しかったから。
とにかく、食べたくても食べられなくて、光が欲しくても光は全く入ってこなくて、動きたくても動けない。そんなところに入りたいなんて、動かない死体になってから言えばいいと思います。
それから、今日あったことといえば。家にやってきた冒険者さんがレイチェルの絵本を持っていたので交換してもらいました。
今まで保管していたあの絵本、レイチェルの絵本っていうのね。あれはルミエストにいる本物のお兄ちゃんに届けるものだけど、前に溶けた妹で汚れたことは黙っておくことにします。
レイチェルの絵本はあのお兄ちゃんの死んでしまった妹が好きだったらしいですが、わたしにはあまり意味が分からなかったので残念です。
レイチェルって一体どんな人だったのでしょうか。確かに絵はとてもきれいなので天才とか言われる人だったのかしら。
紫のお兄ちゃん(本物の方ね)は自分の妹を"身体を壊すほど絵の勉強をしていた"と言っていましたが、紫のお兄ちゃんの妹は、レイチェルになりたかったのでしょうか。
レイチェルはレイチェルで、紫のお兄ちゃんの妹(名前は知らないけど)は紫のお兄ちゃんの妹でしかないのに、馬鹿げた話です。
成り代わるといえば、そうだ。昨日も書いた話だったけれど、死体になる前のわたしは死んでしまったお兄ちゃんの真似をしてお父さんに好かれようとしていたのでした。
今思えばとても滑稽で……滑稽で滑稽で滑稽で仕方ない話です。
自分でない誰かになり代わろうとしても、決してなり代わることはできない。どうしてそんなことがわからなかったのでしょう。
いくら自分が女であることを拒んでも、髪を短くしてもお人形遊びをやめても"妹"が"兄"になることなんてできません。
あの頃のわたしはお兄ちゃんを失って、そのお兄ちゃんの"妹"である自分まで失ってしまったのです。
紫のお兄ちゃんの妹も、レイチェルになり代わろうとして自分を失ってしまったのでしょうか。そんなこと、わたしにはわかりません。わかりようがありません。
どうしても知りたかったら、紫のお兄ちゃんの妹がいる墓を掘って起こしてくるしかないでしょう。
でも、ずっと寝ているせいで肌が腐って変な色になっていたり、髪が抜けていたり、裸の骨になったりしているところなんて、他人に見られたくないと思うので会いに行こうとは思いません。
わたしだって、つくりものの片目が外れていたり、身体中に包帯を巻き忘れていたりしている時は他人と会いたくないんだもの。
……今までこの文章を書いていたら気付きました。
もしかすると、わたしは紫のお兄ちゃんのお人形を作ってお人形のお兄ちゃんの"妹"に成り替わりたかったのかもしれません。
本物の紫のお兄ちゃんの妹は一人だけです。だからこそ、紫のお兄ちゃんは妹のことを忘れられないのでしょう。
わたしはそんな"妹"を求める心をもつ紫のお兄ちゃんからお人形を作れば、わたしを"妹"と見て兄妹ごっこをしてくれるお人形ができると思ったのかもしれません。
……お人形のお兄ちゃんがまたお腹を破いてしまったみたいです。オミンは最初から安定してきたけれど、お兄ちゃんは不安定なのか自分の身体をちぎったり破いたりしてワタを出してしまいます。
このままじゃお腹にたくさん詰めてあるワタまで引っ張り出しちゃうから縫ってあげなくちゃ。
こんなことがないように、ちゃんと痛覚を付けてあげよう。
お人形のお兄ちゃんは決してわたしを妹として見てくれるわけじゃありません。
それでも、わたしはお人形のお兄ちゃんを手離しません。
絶対に、絶対に離しません。
*おしまい*
*おしまい*
PR
グレーテルの人体練成にっき2
(まえがきのような何か)
この文章は、こちらの続きになっています。引き続きグレーテルの日記のような何か。
今回はレントンさんを人体練成するまでのパートになっています。
×月×日
今日は天気が良かったので緑色のお兄ちゃんを連れて外に行ってみました。
プチと遊ぶ緑のお兄ちゃんはとても楽しそうです。
だけど、遊び終わったあとに服を汚してしまったのでお風呂に入れなければいけませんでした。
外に連れていってあげたら、緑のお兄ちゃんはあまりいたずらをしなくなったような気がします。
前はわたしの髪の毛を引っ張って遊んだり、スカートをめくったりするので大変でした。
緑のお兄ちゃんのいたずら好きは最近の頭痛の種になっていたので、家でいたずらをされるよりは外へ連れていってあげた方がずっといいのだと思います。
あと、緑のお兄ちゃんは、寝る時には"お人形"に戻ってもらうことにしました。
お兄ちゃんの姿のままだと、ベッドに入りません。
……そういえば、エレアの緑色だったお兄ちゃんと青いお姉ちゃんがいた洞窟には確か"オミン"と書かれたぼろぼろの布切れが落ちていました。
確か、その布切れは子供が着る服の胸に付いているような名札の布にとても似ていたと思います。
エレアのお兄ちゃんもお姉ちゃんも"オミン"という名前じゃありませんでした。
あとは、そうだ。エレアのお兄ちゃんはわたしが今回のお人形作りに使ったお肉を"乞食の肉"だと言っていた覚えが、あります。
エレアのお兄ちゃんがもってきた乞食のお肉は人だった頃には"オミン"という名前を持っていたのでしょうか。
もしかすると、"オミン"という名前だったお兄ちゃんはまだ子供だったのかもしれません。
貧しい子供が乞食になって死んでいく……とてもよくある話でしょう。
この世界はたくさんの子供が生まれては死んでいきます。赤ちゃんを産めない死体になってしまったわたしからすると、それはとてもひどく悲しいことです。
もしかすると、こんな世界で苦しみながら生きて死んでいくよりは、母のお腹の中で守られて生まれてこないことの方がしあわせなのかもしれません。
もう、今のわたしにはお腹の中で子供を守ってあげるための臓器がないのだけれど。
わたしは、お人形を抱いているととても安心します。特に、お腹の中で温めてあげるふりをするととても気持ちが安らぐのです。
きっと、わたしは何かを諦めきれないのでしょう。だからこそ、わたしはお人形が大好きなのです。
……いたずらばかりする緑のお兄ちゃんのことはこれからは"オミン"と呼ぶことにします。
いたずら好きなのも、子供だったのだと考えたら納得できる話です……。
×月×日
今日も、パーティー会場で紫のお兄ちゃんを見かけました。歌屋さんの演奏が目的なのでしょうか。
街にいると、紫のお兄ちゃんが傍にいる歌屋さんの演奏に文句を言ったり石を投げるのをよく見かけます。
紫のお兄ちゃんは音楽が好きなのでしょうか。そうだとすれば何だか意外に思います。
私は紫のお兄ちゃんが歌屋さんをいじめるのを、ただ単にうるさいからだと思っていました。
だって、あのお兄ちゃんはいつも"人の声や人の立てる音なんて聞きたくない"とでもいう顔をしていたもの。人は見かけで判断してはいけないものです。
あのお兄ちゃんはどんなウタが好きなのでしょうか。少し考えてみます。
……何にしても、パーティー会場にいるお兄ちゃんからはお人形の材料を貰いたいのだけれど。
そういえば、前にお買い物がしたくて魔術士ギルドに寄った時は入口で紫のお兄ちゃんがぼんやりと立っていて邪魔だったので声をかけようとしたら間違えて"お兄ちゃん"と呼んでしまいました。
いきなり他人を"お兄ちゃん"や"お姉ちゃん"と呼ぶのは変だと分かっているのだけれど、わたしはどうしてなのかこの言い間違いが直りません。
他人を"お兄ちゃん"や"お姉ちゃん"と呼んでいいのは"妹"くらいのはずなのに変なノ。
紫のお兄ちゃんはわたしに"お兄ちゃん"と呼ばれると、怯えるような怒っているような声で"その呼び方はやめてくれ"と言っていました……。
他の人なら"お兄ちゃん"と呼んでも少し変な目で見られるだけで済むだけだけど、紫のお兄ちゃんは"お兄ちゃん"と呼んだら少し泣きそうな目をしていました。呼び間違えないように気をつけなくちゃ。
そうだ。"妹"といえば、生きものだった頃、わたしには血の繋がったお兄ちゃんがいたとグランマから聞いたことがありました。
でも、わたしにはお兄ちゃんの記憶がありません。お兄ちゃんはまだ小さいうちに病気で死んでしまったと聞きました。
わたしがグランマと暮らすようになったのは、この"お兄ちゃん"のことが関係したみたいです。
グランマはとても優しい人でした。でも、わたしにはお母さんとお父さんに優しくされた記憶がありません。
お母さんは私が生まれた後に病気で死んでしまったようでした。お父さんは……わたしを嫌っていたみたいです。
お父さんはわたしを"魔女の子供だ"と言っていました。あの頃は、大好きだった絵本に出てくる魔女のことを言っているのだと思って嬉しかったのだけど、きっと悪い魔女だと言いたかったのだと思います。
"良い魔女"と"悪い魔女"というのは一体誰が決めるのでしょうか。わかりません。
ああ、話が逸れちゃった。まだ集まっていない紫のお兄ちゃんのお人形の材料は、体液だけになりました。
緑のお兄ちゃ……オミンの時は血液だけを使ったのですが、他の体液を混ぜるとどうなるのでしょう。例えば涙とか唾液とか。
どんな体液を混ぜようかな。とにかく、試してみたいと思います。
唾液をちょうだいなんて言ったら……流石にヘンタイ扱いされてしまいそうです……。
ましてや、精液なんて……やっぱりダメです。
×月※日
昨日は、緑のお兄……じゃないや、オミンが吸血コウモリに噛まれてしまいました。
空き地のモンスター退治の依頼で、目を離した隙に倒れてしまっていたのです。
オミンのお人形は首が破れてしまったので、わたしは悲しくなりました。
ルミエストの南にある酒場にいるバーテンダーのお姉ちゃんにオミンを預けて暫くすると、オミンの身体は修理されて戻ってきました。
でも、戻ってきたオミンはとても不機嫌そうだったのでこれからはちゃんと目を離さないようにしなくてはいけません。
酒場は歌屋さんが歌っていて酔っ払った人たちがとてもうるさい場所です。
特に、煙草を吸う人が苦手です。あの煙を吸っていると目と頭が痛くて仕方なくなるから。
どうしてあんな煙をわざわざ吸いたがるのか、わたしにはわかりません。
昔、遠い国には自分の腕を煙草の火で焼く女の子や男の子がいると本で読んだことがありました。
あの時、わたしは本の挿絵に書かれた女の子や男の子の火傷だらけになった腕を怖いと思っていた覚えがあります。だけど、目を離すことができなかったのです。どうしてかしら。
あと、お父さんやお母さんに嫌われた小さな子供が煙草の火を押し当てられて泣いている絵のある本を読んだことがあったのです。これも怖くて嫌いな絵本でした。
こんな本、一体どこで読んだものだったのかしら。今となっては思い出せません。
本に書かれていた言葉も、まったく何も思い出せないのです。
そうそう。こんなことが書きたいんじゃないのです。煙草の話はここで終わります。
昨夜の酒場には、テーブルに突っ伏してしくしくと泣いている男の人がいました。
他の人たちはその人を迷惑そうな目で見ています。みんなが"この人を店から追い出してくれ"という顔をしているのですが、誰もその人に近寄ろうとしません。
わたしはわたしで、泣いているその人を間違えて"お兄ちゃん"と呼んでしまったのでそこからが大変でした。
泣いているのは紫のお兄ちゃんだったのです。しかも、かなりひどく酔っ払っていました。
お兄ちゃんは余計に泣いてしまうし、泣きながら絡んでくるし、正直に書けば怖かったです。
それにしても、酔っ払った人はどうしてみんな"飲んでいないよ"と言うのでしょうか。不思議です。
とりあえず。その時に紫のお兄ちゃんからは少しだけ涙を貰ってきました。手荷物に空き瓶があったので助かりました。
思えば、昨夜に血も貰ってこれば良かったのです……それどころじゃなかったのだけど。
お兄ちゃんの動かないお人形が、どんどん重くなっていきます。
○月×日
今日は、やっと紫のお兄ちゃんから血を貰うことに成功しました。
これでやっとお人形を作ることができます。
たくさん余ったお肉はもう食べちゃっています。お兄ちゃんのお肉ってどうしてこんなに美味しいのでしょうか。
二人目のお兄ちゃん作りは、今夜始めることにします。お兄ちゃんを入れる鍋はきれいに洗っておかなくちゃ。
そういえば、気が付くと家にある服が全部黒くなっていました。
ものを書く時にいつもインクをこぼして、そのたびに落ちなくなったインクをごまかすため黒く染めているせいです。
でも、明るい色より黒やぶどう色みたいな暗い色のほうが落ち着くのでこれでいいかなと思いました。
街の人と話をしていると、どうやらわたしは「紫をまとう骨」と呼ばれているみたいです。
紫はまだわかります。これは髪の色でしょう。でも、骨というのは……やっぱり、骨だけになってしまった左手を見せるのがいけないのでしょうか。
前は、街の人に"そんな骨が剥き出しの腕で痛くないのか"と聞かれたことがあったと思います。ヨウィンでは、見知らぬ子供に腕を見られて泣かれたこともあったのでした。
わたしは今まで気にしていなかったけれど、骨が剥き出しの腕なんて生きている人たちからすると不気味なのかもしれません。
そういえば、この骨だけの左手には爪もないので少しものを持つのにも不便です。
そうだ。指先に爪を付けた手袋があれば少し便利になるかナ。手袋だと腕を隠すこともできます。
でも、そこら辺のお店では爪のついた手袋なんて売っていません。
どうすればいいのか。ちょっと考えてみることにします。
……さっきから猫のコフゲンがにゃんにゃん鳴いています。お腹が空いているみたいだからご飯をあげなくてはいけません。
まだノースティリスに着いたばかりの頃のコフゲンは、わたしには食べられないものばかりを食べさせてしまっていたのでとても毛並みが悪かったです。
最近は、パンや魚も食べさせてやれるようになったので少しきれいな毛になってきました。
コフゲンは家に置いたままにしているととても退屈そうなので、たくさんの人に可愛がられるところに連れて行ってあげた方がいいのかな……と思います。
あんまり懐いてくれないけれど、洞窟にひとりで寂しかった頃の話相手だったのでコフゲンはわたしにとってとても大切な猫です。
追記。コフゲンにご飯を上げていたら夜になっていたので、今からお人形作りを始めます。
*つづきをよむ*
この文章は、こちらの続きになっています。引き続きグレーテルの日記のような何か。
今回はレントンさんを人体練成するまでのパートになっています。
×月×日
今日は天気が良かったので緑色のお兄ちゃんを連れて外に行ってみました。
プチと遊ぶ緑のお兄ちゃんはとても楽しそうです。
だけど、遊び終わったあとに服を汚してしまったのでお風呂に入れなければいけませんでした。
外に連れていってあげたら、緑のお兄ちゃんはあまりいたずらをしなくなったような気がします。
前はわたしの髪の毛を引っ張って遊んだり、スカートをめくったりするので大変でした。
緑のお兄ちゃんのいたずら好きは最近の頭痛の種になっていたので、家でいたずらをされるよりは外へ連れていってあげた方がずっといいのだと思います。
あと、緑のお兄ちゃんは、寝る時には"お人形"に戻ってもらうことにしました。
お兄ちゃんの姿のままだと、ベッドに入りません。
……そういえば、エレアの緑色だったお兄ちゃんと青いお姉ちゃんがいた洞窟には確か"オミン"と書かれたぼろぼろの布切れが落ちていました。
確か、その布切れは子供が着る服の胸に付いているような名札の布にとても似ていたと思います。
エレアのお兄ちゃんもお姉ちゃんも"オミン"という名前じゃありませんでした。
あとは、そうだ。エレアのお兄ちゃんはわたしが今回のお人形作りに使ったお肉を"乞食の肉"だと言っていた覚えが、あります。
エレアのお兄ちゃんがもってきた乞食のお肉は人だった頃には"オミン"という名前を持っていたのでしょうか。
もしかすると、"オミン"という名前だったお兄ちゃんはまだ子供だったのかもしれません。
貧しい子供が乞食になって死んでいく……とてもよくある話でしょう。
この世界はたくさんの子供が生まれては死んでいきます。赤ちゃんを産めない死体になってしまったわたしからすると、それはとてもひどく悲しいことです。
もしかすると、こんな世界で苦しみながら生きて死んでいくよりは、母のお腹の中で守られて生まれてこないことの方がしあわせなのかもしれません。
もう、今のわたしにはお腹の中で子供を守ってあげるための臓器がないのだけれど。
わたしは、お人形を抱いているととても安心します。特に、お腹の中で温めてあげるふりをするととても気持ちが安らぐのです。
きっと、わたしは何かを諦めきれないのでしょう。だからこそ、わたしはお人形が大好きなのです。
……いたずらばかりする緑のお兄ちゃんのことはこれからは"オミン"と呼ぶことにします。
いたずら好きなのも、子供だったのだと考えたら納得できる話です……。
×月×日
今日も、パーティー会場で紫のお兄ちゃんを見かけました。歌屋さんの演奏が目的なのでしょうか。
街にいると、紫のお兄ちゃんが傍にいる歌屋さんの演奏に文句を言ったり石を投げるのをよく見かけます。
紫のお兄ちゃんは音楽が好きなのでしょうか。そうだとすれば何だか意外に思います。
私は紫のお兄ちゃんが歌屋さんをいじめるのを、ただ単にうるさいからだと思っていました。
だって、あのお兄ちゃんはいつも"人の声や人の立てる音なんて聞きたくない"とでもいう顔をしていたもの。人は見かけで判断してはいけないものです。
あのお兄ちゃんはどんなウタが好きなのでしょうか。少し考えてみます。
……何にしても、パーティー会場にいるお兄ちゃんからはお人形の材料を貰いたいのだけれど。
そういえば、前にお買い物がしたくて魔術士ギルドに寄った時は入口で紫のお兄ちゃんがぼんやりと立っていて邪魔だったので声をかけようとしたら間違えて"お兄ちゃん"と呼んでしまいました。
いきなり他人を"お兄ちゃん"や"お姉ちゃん"と呼ぶのは変だと分かっているのだけれど、わたしはどうしてなのかこの言い間違いが直りません。
他人を"お兄ちゃん"や"お姉ちゃん"と呼んでいいのは"妹"くらいのはずなのに変なノ。
紫のお兄ちゃんはわたしに"お兄ちゃん"と呼ばれると、怯えるような怒っているような声で"その呼び方はやめてくれ"と言っていました……。
他の人なら"お兄ちゃん"と呼んでも少し変な目で見られるだけで済むだけだけど、紫のお兄ちゃんは"お兄ちゃん"と呼んだら少し泣きそうな目をしていました。呼び間違えないように気をつけなくちゃ。
そうだ。"妹"といえば、生きものだった頃、わたしには血の繋がったお兄ちゃんがいたとグランマから聞いたことがありました。
でも、わたしにはお兄ちゃんの記憶がありません。お兄ちゃんはまだ小さいうちに病気で死んでしまったと聞きました。
わたしがグランマと暮らすようになったのは、この"お兄ちゃん"のことが関係したみたいです。
グランマはとても優しい人でした。でも、わたしにはお母さんとお父さんに優しくされた記憶がありません。
お母さんは私が生まれた後に病気で死んでしまったようでした。お父さんは……わたしを嫌っていたみたいです。
お父さんはわたしを"魔女の子供だ"と言っていました。あの頃は、大好きだった絵本に出てくる魔女のことを言っているのだと思って嬉しかったのだけど、きっと悪い魔女だと言いたかったのだと思います。
"良い魔女"と"悪い魔女"というのは一体誰が決めるのでしょうか。わかりません。
ああ、話が逸れちゃった。まだ集まっていない紫のお兄ちゃんのお人形の材料は、体液だけになりました。
緑のお兄ちゃ……オミンの時は血液だけを使ったのですが、他の体液を混ぜるとどうなるのでしょう。例えば涙とか唾液とか。
どんな体液を混ぜようかな。とにかく、試してみたいと思います。
唾液をちょうだいなんて言ったら……流石にヘンタイ扱いされてしまいそうです……。
ましてや、精液なんて……やっぱりダメです。
×月※日
昨日は、緑のお兄……じゃないや、オミンが吸血コウモリに噛まれてしまいました。
空き地のモンスター退治の依頼で、目を離した隙に倒れてしまっていたのです。
オミンのお人形は首が破れてしまったので、わたしは悲しくなりました。
ルミエストの南にある酒場にいるバーテンダーのお姉ちゃんにオミンを預けて暫くすると、オミンの身体は修理されて戻ってきました。
でも、戻ってきたオミンはとても不機嫌そうだったのでこれからはちゃんと目を離さないようにしなくてはいけません。
酒場は歌屋さんが歌っていて酔っ払った人たちがとてもうるさい場所です。
特に、煙草を吸う人が苦手です。あの煙を吸っていると目と頭が痛くて仕方なくなるから。
どうしてあんな煙をわざわざ吸いたがるのか、わたしにはわかりません。
昔、遠い国には自分の腕を煙草の火で焼く女の子や男の子がいると本で読んだことがありました。
あの時、わたしは本の挿絵に書かれた女の子や男の子の火傷だらけになった腕を怖いと思っていた覚えがあります。だけど、目を離すことができなかったのです。どうしてかしら。
あと、お父さんやお母さんに嫌われた小さな子供が煙草の火を押し当てられて泣いている絵のある本を読んだことがあったのです。これも怖くて嫌いな絵本でした。
こんな本、一体どこで読んだものだったのかしら。今となっては思い出せません。
本に書かれていた言葉も、まったく何も思い出せないのです。
そうそう。こんなことが書きたいんじゃないのです。煙草の話はここで終わります。
昨夜の酒場には、テーブルに突っ伏してしくしくと泣いている男の人がいました。
他の人たちはその人を迷惑そうな目で見ています。みんなが"この人を店から追い出してくれ"という顔をしているのですが、誰もその人に近寄ろうとしません。
わたしはわたしで、泣いているその人を間違えて"お兄ちゃん"と呼んでしまったのでそこからが大変でした。
泣いているのは紫のお兄ちゃんだったのです。しかも、かなりひどく酔っ払っていました。
お兄ちゃんは余計に泣いてしまうし、泣きながら絡んでくるし、正直に書けば怖かったです。
それにしても、酔っ払った人はどうしてみんな"飲んでいないよ"と言うのでしょうか。不思議です。
とりあえず。その時に紫のお兄ちゃんからは少しだけ涙を貰ってきました。手荷物に空き瓶があったので助かりました。
思えば、昨夜に血も貰ってこれば良かったのです……それどころじゃなかったのだけど。
お兄ちゃんの動かないお人形が、どんどん重くなっていきます。
○月×日
今日は、やっと紫のお兄ちゃんから血を貰うことに成功しました。
これでやっとお人形を作ることができます。
たくさん余ったお肉はもう食べちゃっています。お兄ちゃんのお肉ってどうしてこんなに美味しいのでしょうか。
二人目のお兄ちゃん作りは、今夜始めることにします。お兄ちゃんを入れる鍋はきれいに洗っておかなくちゃ。
そういえば、気が付くと家にある服が全部黒くなっていました。
ものを書く時にいつもインクをこぼして、そのたびに落ちなくなったインクをごまかすため黒く染めているせいです。
でも、明るい色より黒やぶどう色みたいな暗い色のほうが落ち着くのでこれでいいかなと思いました。
街の人と話をしていると、どうやらわたしは「紫をまとう骨」と呼ばれているみたいです。
紫はまだわかります。これは髪の色でしょう。でも、骨というのは……やっぱり、骨だけになってしまった左手を見せるのがいけないのでしょうか。
前は、街の人に"そんな骨が剥き出しの腕で痛くないのか"と聞かれたことがあったと思います。ヨウィンでは、見知らぬ子供に腕を見られて泣かれたこともあったのでした。
わたしは今まで気にしていなかったけれど、骨が剥き出しの腕なんて生きている人たちからすると不気味なのかもしれません。
そういえば、この骨だけの左手には爪もないので少しものを持つのにも不便です。
そうだ。指先に爪を付けた手袋があれば少し便利になるかナ。手袋だと腕を隠すこともできます。
でも、そこら辺のお店では爪のついた手袋なんて売っていません。
どうすればいいのか。ちょっと考えてみることにします。
……さっきから猫のコフゲンがにゃんにゃん鳴いています。お腹が空いているみたいだからご飯をあげなくてはいけません。
まだノースティリスに着いたばかりの頃のコフゲンは、わたしには食べられないものばかりを食べさせてしまっていたのでとても毛並みが悪かったです。
最近は、パンや魚も食べさせてやれるようになったので少しきれいな毛になってきました。
コフゲンは家に置いたままにしているととても退屈そうなので、たくさんの人に可愛がられるところに連れて行ってあげた方がいいのかな……と思います。
あんまり懐いてくれないけれど、洞窟にひとりで寂しかった頃の話相手だったのでコフゲンはわたしにとってとても大切な猫です。
追記。コフゲンにご飯を上げていたら夜になっていたので、今からお人形作りを始めます。
*つづきをよむ*
紫をまとう骨『グレーテル』の人体練成にっき
(まえがきのような何か)
この文章は管理人のElonaPC(紫をまとう骨『グレーテル』)のプレイ記録や生い立ちの話のようなものだったりそうでなかったりします。
グレーテルの詳細についてはこちらを。
グレーテルはリッチ魔法使いの女性ですが人体練成した乞食とレントンとその他多数の仲間を連れてプレイしています。魔法使いというか人形遣いっぽい。
文中に少し猟奇的な表現を含むかもしれないのでご注意ください。
×月△日
いつの間にか、この"ノースティリス"という場所に辿りついてから一年が経っていました。
最初は食べものの食べ方や飲みものの飲み方、歩き方といった生活に必要なことの方法まで忘れてしまっていたけれど、一年も経てばそこそこ思い出せるようになりました。
最初は喋り方も忘れていて、髪も服もぼろぼろで、街で話しかけた人からいやな顔をされるのが少しつらかったけれど、今はもう気になりません。
そして、ひとりで遠い街まで歩くこともできます。
そうそう。これが書きたかったのです。このノースティリスの街で、わたしはルミエストを一番気に入りました。あんまり暑くなくて、だけどいつも雪だらけじゃないからです。
だから、このおうちもルミエストのすぐ横に建てました。ここは魔女にもやさしい街みたいなのでよかったです。
それから、わたしの大好きな色の髪をしたお兄ちゃんを見かけたから。それが、わたしのルミエストが好きな一番の理由です。
ルミエストにいる、わたしが好きな色のお兄ちゃんはどうやら妹がいたらしいのですが、どうやら湖に入って死んでしまったそうです。妹が死んでしまったのは冬の日だったそうです。
あのお兄ちゃんの妹は、やっぱり雪が降る中で水に入ってしまったのでしょうか。冬の湖はやっぱり凍っていたのでしょうか。
凍った水に入るのは身体がとても痛いと思いました。それから、水に入って死んだ人の身体はとてもひどいと言います。あのお兄ちゃんの妹もとてもひどい姿になってしまったのでしょうか。
全身の皮は水で膨れてぶよぶよで、髪もぼろぼろに抜け落ちて、身体の中が腐ってガスが出るせいでお腹は妊婦さんのように膨らんで……お肌も緑色だったり灰色だったり、変な色になっていたかもしれません。
そんな姿でお人形さんにするのはちょっとかわいそうな気がするのでお墓の中で骨になるまでゆっくり眠らせてあげた方がいいと思います。
あと、やっぱりあのお兄ちゃんの妹はお兄ちゃんと似たきれいな色の髪をしていたのでしょうか。もしそうだとすれば、ぼろぼろに抜け落ちてしまったのなら、とてももったいないです。
……"冬の日"、"凍った水"という言葉を並べてみたら何だかとてもいやなことを思い出しそうになりました。
わたしは湖を見ても平気だったから多分、"とてもいやなこと"と湖は関係ないはずです。何がいけないのでしょうか。やっぱり、川でしょうか……?
……きっと思い出したら大変なことになってしまうのでこのことについてはもう考えないようにします。
○月×日
今日はネフィアとよばれる遺跡で拾った鍋の説明書を読んでみました。
この鍋は、どうやらバラバラになったお人形を使って新しいお人形を作れるようです。
このお人形は生きていて、本来は作ってはいけないものらしいです。
もし作ってしまった場合は、"カルマ"といわれるものがたくさん減って罪を償わなくてはならないそうです。
でも、わたしはお人形がほしい。この手でお人形作りをしてみたいのです。
お人形作りをしたら罪を償わなくてはいけないルールなら償いたいと思います。
まず、倒れていた私を介抱してくれたエレアのお兄ちゃんがくれたお肉…何だか食べる気になれなくてまだ冷蔵庫に置いてあるお肉を素材にお人形作りをしてみます。
そのためには、まだまだ身体の部品が足りないのでパーティー会場で集めて来なくてはいけません。
それから。お人形作りができる鍋はくず石や動物の骨やいらない布からふかふかしたパンを作れるそうなのでこれからは食べるものにも困らなくなります。とても嬉しいです。
あとはお薬の調合なんかもできるそうなので試してみることにします。
"お薬の調合"という言葉を読むと何だかなつかしい気持ちになりました。
確か、小さい頃にグランマがわたしに"生きる知恵"として教えてくれたような気がします。
"お酒は人を癒す薬にも人を殺す薬にもなる"
グランマはそう言っていたと思います。
でも、わたしはお酒で自分の身体と頭をダメにしてしまったそうなのでお酒はもう飲みたくありません。
お酒で頭をダメにしなければ、今のわたしはこんなに忘れんぼうじゃなかったはずです。
お酒は、とてもとても危ない薬です。
○月××日
今日は、わたしが生きているお兄ちゃんの人形を作りたいわけを考えてみました。
どうやら今のわたしは"リッチ"と呼ばれる存在らしいです。リッチという言葉には外国で"死体"という意味があります。
つまり、わたしは死体なのです。普通の死体は動きません。それなのにわたしの身体が動くのはどうやら"呪い"といわれる魔法のせいらしいのです。
わたしは魔法で動く死体だという証拠に、わたしの左手は肉を食べてしまったせいで骨のまま戻りません。骨のままでも左手は動きます。それは魔法の力です。
わたしの右目は腐ってしまいました。眼球が落っこちてしまったままでは不格好なのでつくりものの目を入れています。つくりものなので右目は見えません。
そして、今のわたしには生理も来ません。
それだけじゃない。どうやら、わたしは"リッチ"になる時に赤ちゃんを産む臓器をなくしてしまったらしいのです。
わたしは赤ちゃんを産めないのです。
わたしはもう"母"にはなれないのです。
でも、もう赤ちゃんが産めないことは悲しいことだと思いません。そもそも、腐った死体が赤ちゃんを産むなんて…おかしいことだとわたしは思います。
"死体"ことリッチから生まれた赤ちゃんって何と呼べばいいのでしょう? 人間? それともリッチ?
そして、腐った死体から出る母乳なんて腐っているに決まっています。腐った母乳を赤ちゃんにあげるなんていやです。
だから、わたしは赤ちゃんじゃなくてお人形が欲しいのかもしれません。
お人形を作るなら、お兄ちゃんのお人形がほしいです。
髪の毛の色は、きれいな紫色がいいです。
お兄ちゃんのお人形の部品も、パーティー会場で集めることにします。
お人形作りのことを考えるだけでとてもとても楽しみです。
×月○日
今日はやっと一人目のお人形の材料が揃いました。
お人形の部品集めはとてもとても大変でした。
でも、部品集めが大変だからこそお人形作りはやりがいがあるのかもしれません。
パーティー会場にいる人たちにはお人形の材料をくれる人がいたのでとても助かりました。
あと、新鮮な人のお肉ももらうことができたので、これもとても助かりました。
最初は、人のお肉を料理して食べていると、何だか変な声や歌を聴いたり変な影を見たりしてそれが怖くて叫び回ることになってしまいました。
でも、今はそんなこともなくなりました。歌も影も怖くありません。
あと、最近は人のお肉の味がとても美味しく思えて他のお肉……例えば柔らかいプチのお肉ややどかりのお肉を食べても人のお肉ほど美味しいと思えなくなりました。
どうしてなのか、人のお肉が食べたいのです。
わたしは、おかしくなってしまったのでしょうか……だけど、この土地では誰もわたしを"心が壊れている"と言わないのできっとここでは人のお肉を食べることもおかしいことではないのかもしれません。
ここに着く前に住んでいた場所、雪の女王の国ではわたしはもっとひどいことを言われていたはず。"心が壊れている"なんて言葉よりずっと心が痛くて悲しくなることを言われていた気がします。
それなのに、その"ひどいこと"が何だったのかは思い出せないのです。いくら頑張っても思い出せません。
でも、それからだったと思います。わたしが"痛いこと"を大嫌いになったのは。
そんなわたしが、"痛いこと"を思い出せない頭になってしまったことはもしかするととてもしあわせなことなのかもしれません。
思い出せないことは痛くありません。何も感じないのです。
そうだ。"痛いこと"と言ったら思い出した。……思い出せないことと思い出せることがあるのはどうしてでしょう。
昨日、絶対に忘れちゃいけないことはすぐ思い出せるようにと自分の右手を本代わりにしようと小さなナイフで魔法の呪文を彫って黒いインクを流してみました。
そうすると、前よりも魔法の詠唱がうまく行くようになりました。大成功です。
小さなナイフで彫るくらいならあまり痛くなかったので右手はこれから呪文のメモ帳にします。
わたしの身体なら首や胸の方がたくさんの呪文を彫れるけれどすぐに見ることができないのでここには彫りません。胸はあばら骨がぼこぼこしていて文字なんてうまく彫れなさそうです。
それから。右手の文字にインクを流した時、ワンピースの裾にインクをこぼしてしまいました。いくら洗っても取れなかったので黒い染料をたくさんかけてみるときれいに染まりました。
わたしは紫色が好きだけど、黒も好きなので"わざわいをてんじてふくとなす"でした。
……そうそう。こんなことよりも書きたいことがあるのです。お人形のことを書かなくちゃ。これが書きたかったのだから。
鍋の説明書を読むと、お人形の骨は一かけらでいいそうです。瞳も一つでいいそうです。
心臓が一つだけでいいのは分かるけれど……これで大丈夫なのでしょうか?
とにかく作ってみることにします。
そうだ。必要な部品以外に、あの緑色のお兄ちゃんが落としていった髪の毛を一本見つけたのでそれを混ぜてみようと思います。これは実験です。
その前に、街にいる人たちから受けた依頼は全部終わらせておかなくてはいけません。
一人目のお人形作りが終わった後は、しばらく遠く西にあるガードのいない街で寝泊まりする日々が続くことになるはずだから。
今から、西に行く前に、わたしにもできそうな依頼がないかルミエストの掲示板を見に行くことにします。
×月×日
今まで西の街に行っていたので暫くこのノートを開くことができませんでした。
あの街のすぐ傍に雨を避けるための倉庫を一つ作りましたが、ノートを忘れてしまったのです。
思えば、帰還の巻物も何枚か持っていたのだからそれで取りに帰ってこれば良かったのです……今度からはそうします。
今、わたしの横では一人目のお兄ちゃんが寝ています。あの緑色のお兄ちゃんの髪の毛を混ぜたので、お兄ちゃんの髪はきれいな緑色です。
この緑のお兄ちゃんはたまにいたずらをしてくるので困ります。
たとえば、伸びてきて邪魔だったから切った髪の毛をお風呂に浮かべちゃったり。
あの時は自分の髪の毛だと分かっていてもとてもびっくりしてしまいました。
昔読んだ"マンガ"と言われる絵本で、こんな風に呪われた人のお風呂で女の人の髪の毛が水に浮かんでいるという怖い話があったのを思い出しました。
あの絵本が書かれた国では、人の髪の毛が"呪い"に使われていたと聞きます。
そういえば、わたしの髪はまるで生きているみたいで手に負えません。
左側だけは赤い紐で縛っていますが、前に右側も同じように紐で縛ろうとしたら髪が勝手に暴れてほどけてしまいました。
その時には、わたしの髪まで"呪い"をため込んでしまっているみたいでぞっとしました。
……でも、"呪い"で動いている存在なのに"呪い"を怖がるのもおかしい話です。
そうそう。ガードのいない街にいた時は髪を切ることができませんでした。
そのせいで前髪がとても邪魔になってきています。そろそろ切らなくちゃ。
切った髪の毛はちゃんと魔法で燃やしておかないと緑のお兄ちゃんがまたいたずらに使ってしまいます。
それから。次の、きれいな紫色をしたお兄ちゃんのお人形を作る時に混ぜるのは、あのルミエストにいる悲しいお兄ちゃんの髪だけにしたいと思います。
一人目のお兄ちゃんは、緑色のお兄ちゃんにとても似過ぎています……。
えろな自PCの100質問(グレーテル編)
今回の回答者は紫をまとう骨『グレーテル』さん(リッチ魔法使い♀)でした。冒険者wikiの記事はこちらから。
彼女はヴァリアントのomake_overhaulでプレイしています。
ダウナー系というかコミュニケーションにやや難があるタイプの人かもしれません。
馴染みの情報屋が黒いローブ姿の痩せた女の元へ近づいてきた、相変わらずへらへら笑っている。
「やあこんなところに来るなんて久しぶりじゃないか。え、今は依頼中だって?そんなに急ぐなよ、上等のクリムエールも用意しているから向こうで飲もうじゃないか」
「そういえばお前さんもだいぶ偉くなった見たいだな、こっちまで名声が届いてるよ。どうしたそんな顔して?あー本題にいけってかそりゃすまない。お前さんのことを知りたいって奴がいるからちょっとばかし記事を書いてくれないかって頼まれたんだ、よければ協力してくれないか?手間賃はそこの酒でいいぜ。」
「よしわかった、ありがとう。ちょっとばかし長いから覚悟してくれよな」
1 まずは名前を聞こう。
「名前……あなたの名前ですか? あなたの名前、グレーテル」
(女はどこかぼんやりとした顔で答えた。情報屋は女の返答がどこかおかしい気がしたが、そのまま質問を続けることにした)
2 いい名だな、なんか所以があるのか。
「所以? 小さい頃から"グレーテル"って呼ばれていたから……本当の名前は忘れちゃいました」(※1)
3 それで読者はお前さんをなんて呼べばいいかい?ほら!あだ名とかだよ。
「あなたのあだ名? 紫をまとう骨とか言ってる人は多いわ、悪趣味なあだ名ですね……」
(グレーテルはくすくすと笑っている。どこか病んでいるような印象だ)
4 なるほどね、そういえばどこ出身だっけな。
「わたし、お墓の中から生まれてきました」
5 ……ついでに聞いておこう、種族と性別もだ。いや、最近はエーテル病で色々あるからな確認だ。
「今のあなたはリッチ。でも前はローランとか言われる女の子だったみたいです……」
6 次は生年だな、何月に生まれて今何歳だ?
「3月19日。わたしの体、墓から掘り起こされた時は年齢なんて分からなくなっていたって……」
7 こんな項目もあるな、髪と目、肌、あとは服の色、さらに外見的特長を書けって書いてあるな、どうだ?お前さんの自己申告でいいぜ。
「あなたの髪の毛。暗い紫色。それから青っぽい灰色の目、右目はつくりもの。あなたの肌は白い。服は真っ黒。あとは……」
(グレーテルはおもむろにローブの袖をまくり、左手の手袋を外した。その下は文字通り「骨」だった…)
8 よく見ると服装いいじゃねえか、何かこだわってるのか?
「真っ赤な歪んだ花と赤紫の八重咲きマーガレットが付いた赤い紐と首の赤い紐。真っ赤な紐はなんだか懐かしくて……」
(グレーテルは頭の左側に花飾りを着けている。襟元にも細いリボンを着けている)
9 そういえばお前さんの利き手はどっちなんだ?
「あなたの利き手は右、わたしも同じ……」
10 後はそうだな・・・・・・身長と体重も聞いてもいいか?
「…………」
(グレーテルは一枚の紙切れを取り出し、何かを書くと情報屋に手渡した。ガタガタの字で150センチと書かれている。その横には29と書かれていた。やはりガタガタの字だ)
11 OK、わかった。家族構成って聞いたことないな、どんな感じなんだ?
「今は子猫ちゃんや妖精さんや天使さまや死神さまとかと一緒に……」
12 それで今どこに住んでるんだ?
「あなたはルミエストのすぐ近くに棲んでいます……」
13 いいところだな、しかもお前さんの稼ぎだから小城とかに住んでるんだろう?(家の大きさなど)
「小さなお城、あなた……わたしのおうち」
14 お気に入りの家具とかあるかい?
「王家御用のこたつと……それからマダム殺しのソファですね……」
15 あとは冒険者といったら家に人を雇ったり住まわせたりしてるのが相場だが・・・・・・お前さんもそういうのはいるかい?
「メイドのゴルノックさんと……それから色々な人が住んでいます」
16 OK、ありがとう家についてはこれでラストだ。何階建てだ?
「一階建て……」
17 次はお前さん自身についてだ、ずばりお前さんの性格を自分で表すとどんな感じだ?
「あなたはおっとりだと言われていました。お兄ちゃんたちに」
18 次はお前さんの長所だ。
「あなたの長いところ? 髪なら……ああ、違いました……?」
(グレーテルは何かを誤魔化すように不気味な顔でくすくすと笑い始めた。確かに髪は長いが…)
19 ふむふむ、次は短所も言ってみようか。
「リッチになってから、頭が悪くなってしまった気がします……」
20 そうだな、あとは口癖とかあるかい?
「口癖……そうですね。あなたがわたしなのかわたしがあなたなのか分からないのです」
(どうやら「わたし」を「あなた」と言い間違えてしまうと言いたいらしい)
21 ああ!これを聞くのを忘れてたぜ。ほら!お前さんの職業だよ。すまねえな、聞かせてもらえるかい?
「あなたの職業……? あなたは魔女」
22 なるほど、で普段はどこを拠点で活動してるんだ?
「パルミアとルミエストを……」
23 じゃあお次はそうだな・・・・・それ以外で普段は何をしてるんだ?(副業など)
「お花を植えてみたり楽器を弾いてみたり……こんな手でもヴァイオリンって弾けるんですね、ふふ」
24 趣味を聞かせてもらってもいいかい?
「本を読むのとか、それから武器や防具作り……最初は失敗ばかりでしたが、慣れてくると楽しいですよ」(※2)
25 次は特技だな、何かあるか?
「ぼんやりするのは得意ですよ………………?」
(突然何の反応もしなくなったグレーテルを見た情報屋は彼女の肩を揺すった。どうやらぼんやりしていたらしい)
26 後はー・・・愛読書なんかあったら聞いてもいいか?好きな本のジャンルでもいいぜ。
「レイチェルという人が描いた絵本。さっぱり何が言いたいか全然わからないけれどいい本ですね……。いっぱい集めちゃいます」
27 今の職についた理由とか聞いてもいいか?
「わたしが小さい頃、グランマが魔法書の読み方とか薬の作り方、教えてくれて……」
28 じゃあ今の職についてなかったら何をやってたと思う?
「そんなの、ない。女の子はみんな魔女になるものですから……」
29 次は現在の目的、目標を聞かせてもらってもいいか?
「あなたの目的? わたしの……そんなもの。わたしにはいらないのです」
30 何か悩みはあるかい?よければ聞かせてもらいたいな。
「読書は好きなのに。いくら読んでも全部忘れてしまうの。それから自分の顔も。全部、全部……」
31 お前さんの好きな言葉はなんだい?
「あなたの好きな言葉? 言葉っていくら大好きでもみんな最後にはわたしから離れていっちゃうから嫌い」
32 ……じゃあ次に好きなことやものを教えてもらってもいいか?
「お花やぬいぐるみ。かわいい」
33 じゃあ嫌いなものは?
「鎧の飾りとか。かわいくないものは好きじゃない……」
34 そういえばお前さん料理できるのか?できるなら得意料理も教えてくれ。
「あなたの得意料理? ふかふかパンならいくらでも作れます……」
35 なるほどね、それじゃあ好きな食べ物は?
「苺とか、甘い果物。野原の木を引っこ抜いて集めて、たくさん。ふふ、たくさんの果物……」
36 それなら嫌いな食べ物は?
「腐ったお肉。お腹を壊すことはないけれど気持ち悪い味です……特に自分の肉なんてひどい味ですよ」
(情報屋は吐き気を催した)
37 ……好きな場所とかお気に入りの場所とかあるかい?あるなら少しだけ教えてくれよ。
「アクリ・テオラの南にある大きな湖。まるでこちらの世界を覗き込んでいる大きな目みたいで、何かを語りかけてくるみたい。ルミエストの湖は偽物。だから何も聞こえてこないから大丈夫……」
38 お前さん、異性や同姓でもいいや、好きなタイプとかいるかい?
「きれいな紫色の子。冷蔵庫で保存して、ゆっくり腐らせたくなるような……」
39 ……それじゃあ嫌いなタイプはどんな奴だ?苦手でもいいぞ。
「うるさい子。それから煙草を吸う子も嫌いです。目や頭が痛くなりますから……」
40 恋人やパートナーはいるかい?どんな奴だ?
「あなたの恋人? お兄ちゃんなら……」
41 結婚してるかい?
「お肉や骨や皮から作った二人目のお兄ちゃんと婚約しています。綺麗な紫色の子なの」
42 結婚といえばラファエロっているだろ?あの嫁を買い取る奴だよ。あいつのことどう思う?
「あの人は……出会うたびに鉄の処女の中に取り込んでいます」
(グレーテルは再びくすくすと笑った。その横で鉄の処女が黒く錆びた腹の扉を開け閉めしている)
43 もう結構質問も進んだな、そろそろ酔いも回ってきただろう?そういえばお前さんは酒は強かったか?
「お酒は……飲んだら内臓が焼けるみたいでもう嫌です。それで頭もかなり悪くしましたから……」
44 なるほどね、しかし流石にここは酒場だな、あちらこちらで気持ちいいことをやり始めやがる。あんたは気持ちいいことについてどう思う?
「気持ちいいことならいいんじゃないですか……? でも、あなたが喧嘩に巻き込まれるのは勘弁です……」
45 それじゃあ話題を変えようか、朝起きて最初に必ずすることとかあるかい?
「髪の毛を梳かすのは忘れませんよ。これだけ長いともつれちゃいます」
46 じゃあ寝る前に必ずすることはあるかい?
「必ず水浴びはします……それから香油を髪に。わたしもリッチですから」
47 なるほどね、後は眠れない時とかお前さんは何か気分転換とかするかい?
「この子、ぬいぐるみと喋っています……」
(そう言いながらグレーテルは懐から紫色のクマのぬいぐるみを取り出した)
48 じゃあストレスがたまった時にどうやって解消する?
「ストレス……? そんなものはないのです」
49 OK、それじゃあ次はお前さんの旅について聞いてみよう。旅に出るときに絶対に持っていくもの、必需品とかあるかい?
「さっきの子(ぬいぐるみ)と、それから睡眠薬や麻酔の瓶。酒も濃くしたものが意外と役に立つのです……」
50 次はお前さんの得物についてだ、その誇らしげに掲げているものだよ。どういった武器なんだ?エピソードなどもあるなら聞かせてもらいたいな。
「これは、クミロミサイズ。収穫の神様から賜りました……」
51 次は防具についても聞こうか、こちらも何かエピソードとかあるか?
「この指輪、《天使の声》という名前なんです。かわいいですよね……」
52 他にどんなレアな代物を持っているんだ?
「この楽器。家にも同じのが二つあるんですよ……」
(グレーテルは艶やかな弦楽器を取り出した)
53 仲間などを連れているか?よければ簡単に紹介してくれ。
「紫のお兄ちゃんと、緑の子。この二人はお肉と骨と血を集めて作った子。それから紫のかわいい妹と、死神さまと鉄の処女ちゃん。それから神さまから賜った妖精さんと天使さまと……」
(あとの仲間はデビルプチ、野良猫、白狐、ゴールドベルなどがいるらしい)
54 お前さんは何か特定の信仰はあるかい? どの神を信じてるんだ?
「神さまはみんな優しくて大好きです……みんな違う形で手助けをしてくれるから」
55 それ以外に、信じているもの(こと)はあるかい? それは何だ?
「何も……別に何も……」
56 あんたも秘密のひとつやふたつもはあるだろ? ここだけの話、聞いてもいいかい?。
「これ。魔法の詠唱をスムーズにするおまじないです……」
(グレーテルは穏やかな笑みを浮かべながら右腕の手袋を外した。手の甲に刃物のようなもので模様が彫られている。どうやらいつも使う魔法の呪文らしい)
57 ついでに苦手なものとかあるか?
「痛いのとか……それから。頑丈なロープね」
58 あんたはどのギルドに所属してるんだ?
「魔術士ギルドに。あなたは魔法使いですから」
59 あんたは集団戦とか得意かい?もし集団戦するならどこらへんが得意だ?
「氷の魔法や炎の魔法なら得意です……」
60 あんたの周囲の人はどんなやつだ?(よその冒険者でもペットでも)
「みんなかわいい。ふふ」
61 その中で「好き」または「相性がいい」と思うやつはいるか? 良ければ聞きたいな。
「白いねずみちゃんとか。ヴァイオリンケースを背負った子。とてもかわいいと思います」
62 また、「嫌い」または「相性が悪い」と思うやつはいるか? 問題なければ聞きたいな。
「嫌いなら、もうその人はそこにはいない。血や肉も不味いですから……」
63 ついでに、「こいつは変だ!」と思うやつはいるか? どんなやつで、どこが変ですか?
「変といったら……最近できた血の繋がらない妹が『妹』なのに男の子だったのです……私にそっくりな子なのですが……」
64 他人から、自分はどんなやつだと思われていると思うんだ?
「やっぱり、紫の人じゃないですか……?」
65 ライバルはいるか? そいつのことをどう思うんだ?
「わたし、無駄な争いごとは嫌い……だからライバルなんて必要ないものです」
66 一番大切なこと(もの)は何だ?
「生きものごっこ。生きものが生きもののために作ったルールがあるなら生きものじゃなくても守る必要があると思いますよ……?」
67 エーテル病についてどう思う?
「エーテルは……あまり当たると気が変になりそうです。ついでに、身体も変になりますからね」
68 変異についてどう思う?特に人肉嗜好についてだな。
「人の血やお肉は人の形を保つために必要なのですよ。わたしみたいな人もどきには……」
69 必殺技や切り札があるかい?よければ聞かせてほしいな。
「たべる。相手の記憶をたべる。でも、無理に食べたら相手の嫌な記憶が流れてきて頭を悪くしてしまうので切り札なのです」
70 欲しいものはあるか? それは何だ?
「そうね。ノートや紙がほしい。忘れんぼうにはいくらあっても足りないから……」
71 他人と比べても、これだけは負けない、というものは何だ?
「腕の細さ……?」
(グレーテルは再び左手の手袋を外した。文字通り「骨」だから確かに細いが…)
72 これだけは許せない、ということは何だ?
「人の形が崩れること。エーテルの風は嫌。人もどきが人の形を頑張るのは大変なのですよ……」
73 今まで行った場所の中で、一番遠いところはどこだ?
「地獄。でも、ここからは遠いようですぐそこにあるところ」
74 今まで行った場所の中で、一番良かったと思う場所はどこだ?
「この世界。この世界も、地獄と何ら変わりない場所だと思いますが……」
75 今まで生きてきた中で、一番の自慢話をしてもらってもいいか?
「生きものをやめた後、初めてもちを食べるのに成功したこと。リッチになっても窒息するんですね……」
76 今まで冒険してきた中で、一番印象に残っている出来事を聞いてもいいか?
「この世界にはたくさんの神さまがいるのを知ったこと。みんな、違う形で見守ってくれているのです……」
77 今まで生きてきた中で、謎として残っている出来事を聞いてもいいか?
「生きものをやめた後のことだけど。今の家、背が高い女の人が門の前に衣服とか香油とかを置いていくみたいなのです……ゴルノックさんはその女の人について『正体を明かしてほしくない』と言っていたって」
78 今までの人生で、最大のピンチは何だった?
「生きているのか生きていないのかも連絡しないで何処かにフラフラ行ってしまう吟遊詩人に見初められてしまったこと。あの頃はわたしも女の子だったから……」
79 どうやって切り抜けた?
「切り抜けられませんでした……大好きだったもの」
80 今まで言われた中で、衝撃的な一言を聞いてもいいか?
「そんなもの。覚えていられるわけがないじゃないですか……」
81 今まで生きてきた中で破壊した、一番大きなものは何だ?
「トゥルーデ……たくさん思い出があったはずなのに誰だったのかも何もかも全部思い出せない。何も」(※3)
82 それは破壊してもいいものだったのか?
(グレーテルは黙って首を横に振った。)
83 過去の犯罪行為をあったらひとつ言ってくれ。
「禁忌を二回ほど……でも、こんなこと、倫理と言われるものは生きた人によって決められたことじゃないですか?」(※4)
84 「人生を決めた」と思う選択をひとつ教えてくれ。
「ルミエストに初めて行った時。わたし、ここに住むんだろうなって思いました……」
85 もう絶対にここには行かないって場所はあるか? よければ理由も教えてくれ。
「メイルーン。あそこはとても冷たい。ノイエルもメイルーンの冷たさを思い出すからあまり好きじゃないのです……」
86 思い出したくもないような体験をひとつ教えてくれ。
「……ここ(ノースティリス)での生活が全部嘘で自分の身体も心もつくりもので、全部壊れてしまったこと。二回も。今の『あなた』もつくりものでいつか壊れてしまうかもしれないから。だから、忘れてもいいようにしなくちゃ」(※5)
87 今まで戦った中で、一番手強かったもの(人)を教えてくれ。
「あなたにとって手ごわい人間? あなた……じゃない。わたし」
88 死にかけたことはあるか? よければ原因を聞いてもいいか。
「もう生きていないから死ぬこともできない。そんな存在が死にかけることなんてないのです」
89 神にあったことあるか?
「神さまならわたしの家に、住んでいますよ……? それから、ルミエスト墓所でも。え、どうやって呼んだか……?」
(グレーテルは鞄から使用回数が切れた杖を取り出した。猫のような目の宝石が付いた杖だ)
90 自分はどんな死に方をすると思いますか? または、どんな死に方をしたいか?
「魔法が使えなくなった時、あなたは動けなくなってしまう。そのまま。それっきり……」
91 幸せを感じるのはどんな時だ?
「しあわせ? かわいいものがいっぱいある時に感じるものですか……?」
92 ひとつだけ願いが叶うとしたら、何を望む?
「そうね、まともな生きものとして死んでみたい。……冗談ですよ? そんなのあなたには無理です……」
93 憧れる、または尊敬する人はいるか? どんな人だ?
「人は誰も尊敬していませんよ……」
94 子どもの頃、将来なりたいものは何だったんだ?
「絵本に出てくる魔女になりたかった」
95 それは叶ったか?
「そうね。ふふ」
96 今の自分は好きか?
「好きだけど嫌い。嫌いだけど好き」
97 守りたいものはあるか? 内容を言う/言わないは任意でどうぞ。
「あります。でも、あなたはまだ少し信頼できないから教えないの、ごめんね……?」
(グレーテルはにっこりと笑いながら答えた。情報屋は少しショックを受けた…)
98 あんたにとって「冒険」とは何だ?
「冒険。余生のひまつぶしじゃないですか……?」
99 あんたの周囲の人、自分の作者などに向けて、言いたいことをどうぞ。
「わたしの家の前に香油や衣服を置いてくれる人、誰……?」
100 お疲れさまでした。最後に一言どうぞ。
「ありがとう……」
「ありがとな、これでいい記事が書けそうだ。こいつは俺の奢りだ」
そういって情報屋は店で一番高級なクリムエールを女の前に置くと、立ち去っていった。
女はクリムエールを暫く眺めていたが、それをおもむろに他のクリムエールと混ぜ始めた…。
(※1)グレーテルの本名はマルガレーテという設定があります。
(※2)装備作り=omake_overhaulの鍛治スキル
(※3)トゥルーデ=ゲルトルートの愛称。グレーテルは背徳の髑髏『ゲルトルート』の母親設定。
(※4)omake系列のヴァリアントで実装されている人体練成。
(※5)グレーテルのセーブデータは2回ほど事故で損壊。バックアップは忘れないように。
えろな自PCの100質問(ゲルトルート編)
Elonaの自PCの100質問でした。
今回の回答者は背徳の髑髏『ゲルトルート』さん(リッチピアニスト♀)でした。冒険者wikiの記事はこちらから。
一言でいえばダウナー系な人だと思います。
馴染みの情報屋が顔色の悪い女の元へ近づいてきた、相変わらずへらへら笑っている。
※1 ゲルトルートの名前の元ネタは「魔法少女まどか☆マギカ」に登場する薔薇園の魔女です。
※2 ラファエロのクエストでは牧場の鶏を引き取っていただきました。
※3 ゲルトルートが語るオーロラリングは成長阻害エンチャント付き。
※4 ゲルトルートの母親についてははこちらへ。
今回の回答者は背徳の髑髏『ゲルトルート』さん(リッチピアニスト♀)でした。冒険者wikiの記事はこちらから。
一言でいえばダウナー系な人だと思います。
馴染みの情報屋が顔色の悪い女の元へ近づいてきた、相変わらずへらへら笑っている。
「やあこんなところに来るなんて久しぶりじゃないか。え、今は依頼中だって?そんなに急ぐなよ、上等のクリムエールも用意しているから向こうで飲もうじゃないか」
「そういえばお前さんもだいぶ偉くなった見たいだな、こっちまで名声が届いてるよ。どうしたそんな顔して?あー本題にいけってかそりゃすまない。お前さんのことを知りたいって奴がいるからちょっとばかし記事を書いてくれないかって頼まれたんだ、よければ協力してくれないか?手間賃はそこの酒でいいぜ。」
「よしわかった、ありがとう。ちょっとばかし長いから覚悟してくれよな」
1 まずは名前を聞こう。
「……ゲルトルートといいます」
(女は取り出したノートに鉛筆で自分の名前を書き、それを情報屋に見せた。‘Gertrud’と書かれている)
2 いい名だな、なんか所以があるのか。
「小さい頃……遠くの国の薔薇が大好きだった魔女から取った名前だってお母さんに聞いた記憶があります※1」
3 それで読者はお前さんをなんて呼べばいいかい?ほら!あだ名とかだよ。
「……どうやら『背徳の髑髏』と呼ぶ人もいるらしいです。あ。でも、ゲルトでいいです……」
4 なるほどね、そういえばどこ出身だっけな。
「……メイルーンあたりだったと思います」
5 ついでに聞いておこう、種族と性別もだ。いや、最近はエーテル病で色々あるからな確認だ。
「……生きていた頃はローランの母とノーランドの父の間の子でした。今は見ての通り……リッチとして生きています。それから、わ……わたしが女性なのはわかるでしょう? ねえ」
(ゲルトルートは僅かに表情を歪めた。困惑しているようだ。)
6 次は生年だな、何月に生まれて今何歳だ?
「生きていた頃の誕生日は3月18日でした……生きていたのは17歳まで」
7 こんな項目もあるな、髪と目、肌、あとは服の色、さらに外見的特長を書けって書いてあるな、どうだ?お前さんの自己申告でいいぜ。
「髪は消し炭みたいな色だってよく言われます……。それで、服は……灰色のひざ丈ワンピースが好きです……それから、背中の羽の形をした骨はエーテル病……」
(ゲルトルートは緊張しているのかしきりにまばたきをしている。やや灰色がかった淡い紫色の目に長い下睫毛だ。)
8 そんなに緊張しなくてもいいぞ。よく見ると服装いいじゃねえか、何かこだわってるのか?
「この緑色の着け襟と、緑色の帽子はお気に入りなんです……。あ、触らないで……ね?」
(情報屋が着け襟の赤いリボンに触れようとすると、ゲルトルートは左手で情報屋の手を振り払った。)
9 そういえばお前さんの利き手はどっちなんだ?
「……」
(ゲルトルートは右手に握った鉛筆を置くと、左手を指差した。どうやら左利きだったらしい。)
10 後はそうだな・・・・・・身長と体重も聞いてもいいか?
「……」
(ゲルトルートはノートに鉛筆で数字を書いた。『173』という数字の傍に何か書いてあるが黒く塗り潰されて読めない。)
11 OK、わかった。家族構成って聞いたことないな、どんな感じなんだ?
「メイルーンにいた頃の家族は……いなくなったお母さんと何年も蒸発していたお父さんと、腹違いの妹が……」
12 それで今どこに住んでるんだ?
「……今はパルミアの傍に……」
13 いいところだな、しかもお前さんの稼ぎだから小城とかに住んでるんだろう?(家の大きさなど)
「セレブ邸に。広いのは苦手だから……」
14 お気に入りの家具とかあるかい?
「モッコウバラとかネリネの花。それからベッドの傍に神々しい翼鳥鱗細工の棺桶とか、はく製が置いてあるわ……」
(ゲルトルートは僅かに不気味な笑みを浮かべた。)
15 あとは冒険者といったら家に人を雇ったり住まわせたりしてるのが相場だが・・・・・・お前さんもそういうのはいるかい?
「メイドのゴルノックさんと……それから血の繋がらない妹が何人か住んでいるの……」
16 OK、ありがとう家についてはこれでラストだ。何階建てだ?
「……二階建て」
17 次はお前さん自身についてだ、ずばりお前さんの性格を自分で表すとどんな感じだ?
「大人しいと言われていたけれど……よくわからない」
18 次はお前さんの長所だ。
「わからない……敢えて言うなら、我慢強いところ……?」
19 ふむふむ、次は短所も言ってみようか。
「……ぼんやりしているところ」
20 そうだな、あとは口癖とかあるかい?
「……特にはないけれど……」
(情報屋は間もなく彼女が喋り出す時の沈黙こそが癖だと見抜いた)
21 ああ!これを聞くのを忘れてたぜ。ほら!お前さんの職業だよ。すまねえな、聞かせてもらえるかい?
「……ピアニスト」
22 なるほど、で普段はどこを拠点で活動してるんだ?
「パルミアと……それからルミエストね」
23 じゃあお次はそうだな・・・・・それ以外で普段は何をしてるんだ?(副業など)
「ネフィアの探索とか……植物の栽培とか……」
24 趣味を聞かせてもらってもいいかい?
「栽培……」
25 次は特技だな、何かあるか?
「……少し歌が歌えることと……それから少し重いものを運べるくらい」
(ゲルトルートは軽くうつむくと、両手を見ながら呟いた)
26 後はー・・・愛読書なんかあったら聞いてもいいか?好きな本のジャンルでもいいぜ。
「……異国で書かれた曲の歌詞を読むのとか……わたし、この曲の歌詞が好きなの」
(ゲルトルートは懐から取り出した一冊の薄い本を開いた。異国の文字で書かれた詞だが、内容を理解することはできない)
27 今の職についた理由とか聞いてもいいか?
「父親が吟遊詩人だったから……それから、小さい頃に歌だけは褒められていたの……」
28 じゃあ今の職についてなかったら何をやってたと思う?
「母が魔術士だったから……きっとそうなっていた」
29 次は現在の目的、目標を聞かせてもらってもいいか?
「……ただ明日も生者でも死者でもないなり損ないの身体で生きているだけ。それしかわからない……」
30 何か悩みはあるかい?よければ聞かせてもらいたいな。
「……あ。わたし、目つき悪いですよね。実はそれを悩んでいるんです……」
(ゲルトルートは情報屋の目を真っ直ぐに見ながら真面目な顔つきで答えた。)
31 お前さんの好きな言葉はなんだい?
「髑髏」
(情報屋は一瞬ぎょっとした)
32 ……いい言葉だ、じゃあ次に好きなことやものを教えてもらってもいいか?
「本当にいい言葉だと思っているの……? 花とか骨が好き」
33 じゃあ嫌いなものは?
「暑いのと……それからお酒は嫌……」
34 そういえばお前さん料理できるのか?できるなら得意料理も教えてくれ。
「コロッケとふかふかパンなら……」
35 なるほどね、それじゃあ好きな食べ物は?
「コロッケとか……それから甘いものも好き」
36 それなら嫌いな食べ物は?
「エイリアン肉はあまり食べたくないもの……」
37 好きな場所とかお気に入りの場所とかあるかい?あるなら少しだけ教えてくれよ。
「ルミエストが好き……初めて行った時は迷子になって大嫌いだったけれど今は大好きな街。あの街は、吟遊詩人の楽しげな歌に混じってとても悲しい歌が聞こえてくるから」
38 お前さん、異性や同性でもいいや、好きなタイプとかいるかい?
「……わからない」
39 それじゃあ嫌いなタイプはどんな奴だ?苦手でもいいぞ。
「乱暴な人は嫌い、すぐに怒る人とか……」
40 恋人やパートナーはいるかい?どんな奴だ?
「この子……イロポンというの」
(ゲルトルートは傍にいるノイエル馬を指差した。淡い灰色の馬だ)
41 結婚してるかい?
「イロポンと……他はずっと一緒にいる少女やキューピットと婚約している……」
42 結婚といえばラファエロっているだろ?あの嫁を買い取る奴だよ。あいつのことどう思う?
「ああ。あの人……前に雄鶏を可愛がっていた人のことね……」※2
43 もう結構質問も進んだな、そろそろ酔いも回ってきただろう?そういえばお前さんは酒は強かったか?
「お酒は苦手だって……っ! ごめんなさい、ちょっとお手洗いへ行かせて……」
(ゲルトルートは突然席を立つと、口を押さえながら手洗いへ向かった。暫くして息を切らしながら戻ってきた彼女の顔は水に濡れている。)
44 ……なるほどね、しかし流石にここは酒場だな、あちらこちらで気持ちいいことをやり始めやがる。あんたは気持ちいいことについてどう思う?
「別に……いいんじゃないですか。ねえ。ところで、これ飲みます?」
(ゲルトルートは懐から黒いオーラを放つウイスキー瓶を差し出した。)
45 それじゃあ話題を変えようか、朝起きて最初に必ずすることとかあるかい?
「寝ぐせ直しとか……」
46 じゃあ寝る前に必ずすることはあるかい?
「歯磨きとか……やることは生きていた頃と同じ」
47 なるほどね、後は眠れない時とかお前さんは何か気分転換とかするかい?
「意味もなくレイチェルの絵本を開いてみたり、はく製に話しかけてみたりね……」
48 じゃあストレスがたまった時にどうやって解消する?
「外に飛び出して大雨の中、歌ってみたり……それから、アリの観察をしてみたりね……?」
49 OK、それじゃあ次はお前さんの旅について聞いてみよう。旅に出るときに絶対に持っていくもの、必需品とかあるかい?
「これ……」
(ゲルトルートはどこからか取り出した赤紫色の棺桶を開いた。中にクーラーボックスが入っている。中身は聞かない方がいいだろう)
50 次はお前さんの得物についてだ、その誇らしげに掲げているものだよ。どういった武器なんだ?エピソードなどもあるなら聞かせてもらいたいな。
「これ……狂気の杖。両手で扱うのにちょうどいいように細工しているの……」
51 次は防具についても聞こうか、こちらも何かエピソードとかあるか?
「このオーロラリング。リトルシスターが拾ってくれたの……着けているとたまに何だか今までの経験を忘れちゃうんだけど※3」
52 他にどんなレアな代物を持っているんだ?
「この楽器……」
(ゲルトルートは艶やかな弦楽器を取り出した)
53 仲間などを連れているか?よければ簡単に紹介してくれ。
「わたしが連れているのは……ノイエル馬のイロポン、ヴェルニースで再開した猫、ハリねずみ、リッチ、マスターリッチ、デミリッチ、その他には少女とかね」
54 お前さんは何か特定の信仰はあるかい? どの神を信じてるんだ?
「今はクミロミ様を。栽培をするから……」
55 それ以外に、信じているもの(こと)はあるかい? それは何だ?
「意外と思われるかもしれないけれど……人の再生力は私が思っているよりすごいものだと思うの」
56 あんたも秘密のひとつやふたつもはあるだろ? ここだけの話、聞いてもいいかい?
「ルミエストに行った時、大好きだった人に似た色の髪をした女の人を見かけて、それで後を付けてしまったことが……」
57 ついでに苦手なものとかあるか?
「……酒はどうしても苦手。それから生きた人間の体温が……」
58 あんたはどのギルドに所属してるんだ?
「魔術士ギルドに……」
59 あんたは集団戦とか得意かい?もし集団戦するならどこらへんが得意だ?
「轟音の波動を少々……それから仲間を鼓舞したり」
60 あんたの周囲の人はどんなやつだ?(よその冒険者でもペットでも)
「そうね……わたしの周りはアンデッドの子が多いのかな……」
61 その中で「好き」または「相性がいい」と思うやつはいるか? 良ければ聞きたいな。
「生きている子より死んでいる子の方が気が合うと思うの……いい防腐剤の話とか、聞けるし」
62 また、「嫌い」または「相性が悪い」と思うやつはいるか? 問題なければ聞きたいな。
「別にいない……」
63 ついでに、「こいつは変だ!」と思うやつはいるか? どんなやつで、どこが変ですか?
「変って何を基準に言えばいいの? わからない……」
(ゲルトルートは考え込み始めてしまった…)
64 そうだな。他人から、自分はどんなやつだと思われていると思うんだ?
「きっと気持ち悪いと思われている。生きものとしても死者としてもなり損ないだから……」
65 ライバルはいるか? そいつのことをどう思うんだ?
「ライバル? そんなのいない……」
66 一番大切なこと(もの)は何だ?
「それは……あなたには教えられないもの」
67 エーテル病についてどう思う?
「わたしの身体がおかしいのもエーテル病のせいみたい……」
68 変異についてどう思う?特に人肉嗜好についてだな。
「別に……人を食べるのも他の動物を食べるのも同じでしょう?」
69 必殺技や切り札があるかい?よければ聞かせてほしいな。
「切り札……? そうね。毒が塗られたこれとか……?」
(ゲルトルートは懐から紫色のギャルのパンティを取り出した。何だか薬くさい)
70 欲しいものはあるか? それは何だ?
「うーん……家具はもう十分持っているし。神経を強くしたい……」
71 他人と比べても、これだけは負けない、というものは何だ?
「我慢強さなら……」
72 これだけは許せない、ということは何だ?
「不必要な殺傷……それから、食べ物を粗末にするのは嫌」
73 今まで行った場所の中で、一番遠いところはどこだ?
「あの『すくつ』と言われているネフィアか……レシマスの一番奥」
74 今まで行った場所の中で、一番良かったと思う場所はどこだ?
「ルミエストの墓所。あそこはいい場所だと思うの……」
75 今まで生きてきた中で、一番の自慢話をしてもらってもいいか?
「……特には何もないわ」
「……特には何もないわ」
76 今まで冒険してきた中で、一番印象に残っている出来事を聞いてもいいか?
「ルミエストで出会った悩める魔術士の依頼を受けたこととか、ノイエルの母娘のこととか……自分なんて無力な存在なんだと思った」
77 今まで生きてきた中で、謎として残っている出来事を聞いてもいいか?
「わたしはもう本当は死んでいるはずなのに、ここでこうしてあなたとお話をしていることが謎じゃないかって……」
78 今までの人生で、最大のピンチは何だった?
「……ノースティリスに着いて間もない頃、ずっと体調が悪かった時の頃。ガリガリに痩せて髪の毛も全部抜けちゃった……」
79 どうやって切り抜けた?
「抜けた髪の毛を拾い集めて、それでかつらを作って被っていた。あの頃のことはもう思い出したくない……」
80 今まで言われた中で、衝撃的な一言を聞いてもいいか?
「メイルーンにいた頃、同じくらいの歳の子に『気狂い魔女の娘』だって。あの頃は友達なんて誰もいなかった」
81 今まで生きてきた中で破壊した、一番大きなものは何だ?
「お母さんを……わたしが14才だった頃にいなくなっちゃった……」※4
82 それは破壊してもいいものだったのか?
「……そんなわけがないじゃないの」
83 過去の犯罪行為をあったらひとつ言ってくれ。
「ルミエストにイスを呼んでしまったこと。杖も使い方を間違えたら背徳的なものね……」
84 「人生を決めた」と思う選択をひとつ教えてくれ。
「17歳の頃にあの船に乗り込んだこと……結局中途半端ななり損ないの身体で生きていることになってしまったけれど」
85 もう絶対にここには行かないって場所はあるか? よければ理由も教えてくれ。
「メイルーン……みんな冷たい人ばっかりだった」
86 思い出したくもないような体験をひとつ教えてくれ。
「冬の凍った川……」
(ゲルトルートは虚ろな目でぼそりと呟いたが、それ以上は何も答えてくれなかった)
87 今まで戦った中で、一番手強かったもの(人)を教えてくれ。
「レシマスの奥にいたゼームさんという人か……混沌の城のアズラシズルさんか……二人ともできればそっとしておきたかったんだけど」
「レシマスの奥にいたゼームさんという人か……混沌の城のアズラシズルさんか……二人ともできればそっとしておきたかったんだけど」
88 死にかけたことはあるか? よければ原因を聞いてもいいか。
「……死に損ないになったばかりで何も分からなかった頃、洞窟でプチの群れがわたしの身体をバラバラにして食べていくのを見たことがある。あとは頑丈なロープを使って。多分、その時のわたしは確かに死ねていたんだと思う……」
(ゲルトルートは憔悴した顔で呟いた。どうやら相当疲れているようだ)
89 神にあったことあるか?
「夢の中でなら……」
90 自分はどんな死に方をすると思いますか? または、どんな死に方をしたいか?
「……魔力が切れたら多分わたしはきっとただのしゃれこうべになってしまう。もしかしたら、既にわたしはもう……」
91 ……幸せを感じるのはどんな時だ?
「花を見ている時は……背徳の花が好き」
92 ひとつだけ願いが叶うとしたら、何を望む?
「……独りにはなりたくない」
93 憧れる、または尊敬する人はいるか? どんな人だ?
「ルミエストの……悩める魔術士と言われているあの人。彼はあんな調子だけど実力はすごいと思うの。あの人にはわたしみたいになってほしくない。きっとならないと思いたいけれど……」
94 子どもの頃、将来なりたいものは何だったんだ?
「歌を歌う人になりたかった」
95 それは叶ったか?
「そうね……」
96 今の自分は好きか?
「大嫌い」
(ゲルトルートは口元に笑みを浮かべた)
97 守りたいものはあるか? 内容を言う/言わないは任意でどうぞ。
「今傍にいる人たちは……」
98 あんたにとって「冒険」とは何だ?
「……身体が動かなくなるまでの戦い」
99 あんたの周囲の人、自分の作者などに向けて、言いたいことをどうぞ。
「……」
100 お疲れさまでした。最後に一言どうぞ。
「疲れた……」
(ゲルトルートは咳き込んだ。これ以上喋るのは無理らしい)
「ありがとな、これでいい記事が書けそうだ。こいつは俺の奢りだ」
そういって情報屋は店で一番高級な果実ジュースをあなたの前に置くと、立ち去っていった。
「このジュースの色、綺麗……」
(情報屋の姿が見えなくなったのを確かめると、ゲルトルートはグラスを楽しそうに眺め始めた…) ※1 ゲルトルートの名前の元ネタは「魔法少女まどか☆マギカ」に登場する薔薇園の魔女です。
※2 ラファエロのクエストでは牧場の鶏を引き取っていただきました。
※3 ゲルトルートが語るオーロラリングは成長阻害エンチャント付き。
※4 ゲルトルートの母親についてははこちらへ。
プロフィール
HN:
えりみそ
性別:
非公開
最新記事
(02/03)
(04/11)
(07/05)
(07/05)
(03/13)
P R